円安が日本人に望ましくないのは結局、損だから 企業には恩恵あっても消費者にとっては不利益

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企業利益が増えるとしても庶民にとっては……(写真:Ystudio/PIXTA)
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円安になると、企業利益が増える。それだけでなく、名目GDP(国内総生産)も増える。しかし、これは、輸入額増加分を企業が消費者に転嫁するからだ。このため、消費者は、実質賃金低下という形で負担を負う。いまの円安局面で、これがはっきり意識されるようになった。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第72回。

円安で輸出が増え、企業利益が増えた

円安が進んでいる。

しかし、日本銀行は、「円安は日本にとって望ましい」として、金融緩和維持の姿勢を変えていない。

円安は、日本にとって本当に望ましいのだろうか?

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以下では、為替レートの変動によって輸出、輸入価格が変動したとき、企業の付加価値やGDPにいかなる影響が生じるかを分析する。

異次元金融緩和による大規模な国債の購入によって、円安が進んだ。これによって、日本の財サービスの輸出額は、2012年の63.75兆円から、2015年の75.61兆円まで、11.87兆円増加した

(図表1参照、外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

一方、法人企業(金融業を除く全産業)の売上高は、2012年度の1374.51兆円から、2015年度の1431.53兆円まで、57.02兆円増加した。

輸出の増加が企業の売り上げ増に貢献したことは間違いない。

これによって、企業の利益が増えた。それだけでなく、名目GDPも増えた。

円安が企業の利益を増やすことはよく知られている。それだけでなく、経済全体の活動水準を表わすGDPが増えたのである。

だから、円安は企業だけではなく、日本経済全体にプラスの影響をもたらしたように見える。

しかし、詳しく見ると、そうは言えない。その理由を以下で述べる。

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