日本人は「出生率低下」の深刻さをわかっていない 40~50年後に今から備えなければ一体どうなるか

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出生率低下は日本の将来にどんな影響を与えるか? (写真:CORA/PIXTA)
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日本の出生率が、政府がこれまで想定していたより大幅に低下し、歴史上最低値となった。世界で最も高齢化が進む日本は、さらに困難な問題に直面することとなる。
これは、政府の将来推計に大幅な改定を迫るものなのか? そして、日本の将来の経済成長率に大きな影響を与えるのだろうか?
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第73回。

世界で最も高齢化が進んだ日本よりも

かつては英米のほうが高齢化国だった。

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65歳以上の人口が総人口に占める比率を「高齢化比率」と呼ぶことにしよう。

日本の値は、28.7%だ。

ほかの国をみると、アメリカ17.3%、イギリス18.8%、ドイツ22.0%、フランス21.1%、スウェーデン20.5%、韓国16.6%などとなっている。

日本は、これらの国に比べて、飛び抜けて高い。

開発途上国ではこの値は低いので、日本は世界で最も高齢化が進んだ国だ。

日本経済から活力が奪われたとしばしば言われるが、その大きな原因が人口高齢化にあることは、間違いない。

日本は、昔から高齢化率が高かったわけではない。

図表1に示すように、1980年代頃までは、アメリカやイギリスのほうが高かった。

(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

とくに、イギリスが高かった。観光地にいくと、老人が多いのが印象的だった。

それに対して、日本の観光地には若い人たちが多い。大きな違いだと思った。

当時は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と賞賛されていた時代だ。そしてイギリスは、「イギリス病」で疲弊の極にあった。

アメリカ経済もふるわず、アメリカ人は、「われわれの子どもたちは、われわれより貧しくなる」と真剣に心配していた。

その当時の英米と日本との経済力の違いをもたらした大きな原因が、人口構造だったのだ。

ところが、1990年代の中頃以降、日本の高齢化率が急速に高まり、英米を抜いた。そして、この頃から、日本経済の長期停滞が始まった。

なお、図表1には示していないが、多くのヨーロッパ諸国も、英米と同じような推移をたどっている。

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