しかし、以下で述べるように、これは、高齢化問題や労働力不足問題を楽観視してよいことを意味するものではない。
出生率が中位推計のままでも、これらは深刻な問題だからである。
なお、出生率低下が、何の影響ももたらさないわけでない。影響はもちろんある。
それは、0~14歳人口が、これまで想定されていたよりも、2040年で2割程度減ることだ。
これは、教育関係の諸事項には大きな影響を与えるだろう。現在でもすでに、私立大学の定員割れが問題となっている。この問題は、今後さらに深刻さを増すだろう。
上で注記したように、中位推計の場合でも、高齢化はきわめて深刻な問題だ。
それは、高齢者と現役世代の人口比を見れば、明らかだ。図表2からわかるように、2020年には1人の高齢者を現役2人で支えていた。ところが、2040年には1.5人で支えることになるのだ。
だから、仮に高齢者1人あたりの給付がB(という仮の数字)で変わらないとすれば、現役世代1人あたりの負担は、B/2からB/1.5になる。つまり、0.5Bから0.67Bへと33.3%増えることになる。
これは、大変な負担増だ。しかも、賃金は今後もさしては伸びないと考えられるので、負担の痛みは、きわめて大きいだろう。
だから、負担増だけで対処することはできず、給付を相当程度引き下げざるをえないだろう。
医療給付を大幅にカットするのは難しいので、年金の支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう。
2060年には現役世代人口と高齢者人口がほぼ同じに
上で、「低位推計でも労働力は中位推計とあまり変わらない」と述べた。しかし、これは、2030年頃までのことである。これ以降になると、低位推計では労働力不足が中位推計の場合より深刻化する。
現役世代の総人口に対する比率は、現在は約6割だが、2060年頃には、これが約5割にまで低下する。そして高齢者人口とほぼ同数になる。
上と同じ計算を行うと、現役世代1人あたりの負担は、B/2からBになる。つまり、高齢者の給付を不変とすれば、負担は0.5BからBへと2倍に増えることになる。
このような制度は、とうてい維持できないだろう。
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