これまでも深刻であった日本の少子化が、さらに深刻化している。厚生労働省が6月3日に発表した人口動態統計によると、2021年の日本の出生数は81.1万人で、1899年以降で最少となった。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計は、出生数を3パターン想定している。このうち通常使われるのは「中位」だが、そこでは、2021年の出生数を86.9万人としている。そして、「低位」(悲観的なシナリオ)では75.6万人としていた。
2021年の実際の出生数は、上記のように、これらの中間の数字になった。
人口推計は、長期予測の基本となるものだ。これまでは、さまざまな政府見通しのほとんどが「中位推計」を用いていた。
上記の結果を踏まえて、今後は、さまざまな長期推計の見直しが必要になるだろう。
出生率低下でも、労働人口や高齢者人口は変わらない
では、最近の出生率低下は、将来の日本にどのような影響を与えるだろうか?
とりわけ、人口高齢化との関係では、どうか?
出生率が低下すれば、人口高齢化がますます深刻化することは間違いない。
では、いつ頃の時点において、いかなる影響を与えるだろうか?
以下では、仮に「低位推計」が現実化した場合に、「中位推計」からどのような違いが生じるかを見ることとしよう。
実は、推計の結果を見ると、高齢者の数は、2060年頃まで見ても、出生率中位推計の場合と変わらないのだ。
これは意外なことと思われるかもしれないが、次のように考えれば、当然であるとわかるだろう。
2060年において65歳以上の人とは、1995年以前に生まれた人だ。その人たちは、2020年時点においては、すでに45歳以上になっている。だから、2020年に出生率が低下しても、2060年の高齢者数は影響を受けないのである(ただし、死亡率がいまより低下すれば、総数が増えるなどの影響はある)。
現役世代人口(労働年齢人口:15~64歳人口)も、同様の理由によって、2030年までを見る限りは、ほとんど変わらない。2040年になって100万人程度減るだけだ。
このように、今回の調査でわかった出生率の低下は、2040年頃までの高齢者数や労働力人口には、ほとんど影響を与えない。
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