それに加え、日本では物価がほとんど上昇しないから、名目資産である銀行預金の形で資産を保有しても、価値を維持することができる。
また、株価の動向を見ながら売買の決定を行うことも必要ないし、手数料や運用のためのさまざまなコストも必要ない。
こうしたことを考えれば、現在の日本の家計は、日本経済の現状に照らして合理的な資産運用をしている可能性がある。
「貯蓄から投資へ」と何度も言われてきたにもかかわらず、銀行預金が減らないのは、これが合理的な資産運用法だからではないか?
なお、現在インフレが進行中だが、現在のアメリカの状況を見れば明らかなように、それに応じて株価が上昇しているわけではない。むしろ、インフレ対策の金利引き上げで株価が下落している。
つまり、インフレになっても株式投資が実質資産価値を維持できるとは限らない。
成長率を高めることが先
岸田内閣がこの政策を提案するのは、「個人が株式投資を増やせば日本経済は活性化する」という狙いがあるからだろう。
しかし、因果関係の順序は、これとは逆だろう。
いま仮に、何らかの理由で、日本のすべての上場企業が猛烈な成長を始めたとする。
すると、株式投資の有利性が飛躍的に向上するだろう。その場合には、人々は、資産運用対象を、預金から株式投資へと自然に移していくだろう。(なお、長期金利も上昇するから、預金金利も上昇する。しかし、そうであっても、株式投資の比重は増えるだろう)。
こうした変化がないところで、いくら税制優遇で誘導しようとしても、何も起こらない。すでに株式や投資信託を持っている富裕層が利益を得るだけの結果になる可能性が高い。
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