岸田政権の骨太方針に「アベノミクス復活」の奇怪 国民にとって怖い「円安リスク」の対策はなし
岸田政権下でアベノミクスの記述が復活を遂げた理由に答えるのは簡単だろう。昨今、さまざまに報じられている、安倍晋三元首相の巻き返しだ。
「自国通貨建てなら、国はインフレになるまでいくらでも国債を発行できる」というMMT(現代貨幣理論)の主張者である西田昌司議員を、新設した「財政政策検討本部」の本部長に起用し、積極財政派の勢力拡大を図る大ボス。それが現在の安倍氏の姿だ。
こうした動きが影響したのだろう。今回の「骨太方針2022」では、2025年度のプライマリー・バランス(PB、基礎的財政収支)の黒字化目標の文言が消えた。一方、世界の主要国で唯一、平均賃金が20年以上にわたって伸びず、アベノミクスの超低金利政策により円の実質実効為替レートが1970年代初頭以来50年ぶりの安さとなり、「安い日本」「貧しくなった日本」と揶揄されることに対して、「私の政策を批判するのか」と、安倍氏は怒り心頭なのだという。
アベノミクス記述のもう1つのメッセージ
もっとも、安倍氏の怒りを鎮めるためだけにアベノミクスの記載を「骨太方針2022」に復活させたわけではないだろう。岸田政権にはもう1つ別の理由があったといえる。
それは、「足元の急速な円安を阻止するために大規模金融緩和政策を微修正しろ」という一部の市場や有識者の主張に対し、政府として「その意思なし」というメッセージを出すことだ。
日米金利差の拡大を背景に、わずか5カ月強の間に20円もの円安ドル高が進んだにもかかわらず、日銀はそれを意に介する様子もなく、決まった利回りで国債を買い入れる「指値オペ」で、金利をほぼゼロ%に人為的に抑え続けている。その日銀の姿勢に対して、政府も完全に同調する姿勢を示したといっていいだろう。
ただ、それではあまりに従来の政策に対して意固地になりすぎていないだろうか。
今回、違和感がとりわけ強いのは、「骨太方針2022」第1章の書き出し(政府の問題意識)から導き出される論理的帰結として「アベノミクスの堅持」に至るということに、辻褄のなさを感じるからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら