岸田政権の骨太方針に「アベノミクス復活」の奇怪 国民にとって怖い「円安リスク」の対策はなし

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「骨太方針2022」には“懐かしい”文言が明記されていた(写真:編集部撮影)

6月7日に閣議決定された岸田政権の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2022)を読む中で、一瞬、わが目を疑った。

場違いのようなフレーズがあったからだ。それは次のくだりだった。

今後とも、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、経済状況等を注視し、躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行っていく。日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。

大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略――。言うまでもなく、これはアベノミクスの記述だ。いわゆる「3本の矢」についてこれほどのていねいな表現を政府文書で見たのは久しぶりだ。

この記載が、第2次安倍晋三政権が発足した後の「経済財政運営と改革の基本方針2013(骨太方針2013)」でのものなら不思議でも何でもない。しかし、岸田政権が決めた「骨太方針2022」の第1章の一節であるのだから驚きだ。

安倍路線との違いを示唆してきたが、なぜ?

第2次安倍政権下で官房長官を務め、その後、アベノミクスや安倍路線の継承を強調した菅義偉前首相の下で策定された「骨太方針2021」には、このようなアベノミクスの記載はない。

骨太方針2022に明記された「アベノミクス」の文言。傍線は編集部(写真:編集部撮影)

「中身があいまいで何をやりたいのかわからない」と言われながらも「新しい資本主義」という標語を打ち出したり、「自分は(上から目線でなく)人の話をよく聞くことが得意」と強調したり、何かと安倍路線からの修正を示唆してきた岸田首相。

にもかかわらず骨太方針ではアベノミクスが“復活”した。今、政治の中枢で何が起きているのか。

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