実はメロン全国1位、茨城で聞いた「最高の食べ方」 生産者泣かせ「イバラキング」にも挑む達人たち
筆者の意地悪な質問に対して、ハモったかのようにおふたりから同じ言葉が返ってきた。
「それはないです。味が最優先ですから」
新たに生産する品種の条件は、それまでの品種よりもおいしいこと。ここだけは絶対に譲れないのだそうだ。
「日本一の産地がそれをやっちゃおしまいです」と長峰さん。
腕組みしながら黙って大きくうなずく鷺沼さん。ふたりに、全国1位の矜恃を見た気がした。
美味いが生産者には厄介な「イバラキング」
おいしいけど作りづらい。でもおいしいなら生産者として何としてでも作りこなしたい。最近では「イバラキング」がそのひとつ。「イバラキング」は茨城県農業総合センターが開発した青肉のネットメロンの新品種。民間企業と同じ土俵に県が送り出した品種である。
JAほこた管内では、2021年度に「イバラキング」が「アンデス」を抜いて出荷量1位になった。最大の魅力は、糖度が17~18度に達するのに、スッキリさっぱりした味であること。地元鉾田でもまだ味わったことのない人が多くいるようだが、おいしさが評判を呼びファンが増えている。これに伴い、作付面積が一気に増えたそうだ。
「イバラキングはほんと癖の強い品種ですよ。生産者でも絶対に作らないという人と意地になって作り続ける人とに、きれいに分かれるぐらい」と鷺沼さん。
鷺沼さんはイバラキングを安定して作りこなす名人のひとり。
「私がちょうど研究部員だったとき、イバラキング導入初年度に5株試作したんですが、これが秀品が採れずに(まあまあの)良品ばかりで。秀品率が高くない品種を作ったら利益は出ない。ほかの人も同じだったし、こりゃダメな品種だなぁって思っていたら、たったひとりだけが見事に作りこなしたんです。アンデスよりもネットがきれいに入って大玉で。なにより味に驚いた。
これを作りこなしたらすごいってなって、翌年張り切って面積を広げてみたらまたしても大失敗。3年目も半分ぐらい捨てた月もあって。
イバラキングは一歩間違うと、熊がひっかいたような模様になったり、大玉にならなかったりするんです。性質的に、ネットが出るタイミングの気温と天気に大きく影響を受けるので、植え付け時期を変えてリスク分散してます。1回失敗しても、全体で見れば利益が出るように」
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