ハラスメント被害が軽視されがちな「根深い理由」 頼るべき専門家が見つからない、構造的な問題

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

今野:本当に人それぞれですが、労使交渉がうまくいって前向きに回復していける方もいれば、なかなか回復せず労働に戻っていけない方もいらっしゃいます。ただ、どの方にも共通して言えるのは、相談に来てくれさえすれば、そのまま自分が悪いんだと思い続けることはないということです。

――それは非常に大きなポイントですよね。

今野:また、回復というのは個人の話にとどまらないと思っています。先程お話ししたカウンセラーが労災の知見を持っていない話とも繋がるんですが、心理的なカウンセラーにはストレスの原因である労働問題の解決ができないこともあって、相談者を耐えたり忘れたりするほうへ導きがちになります。もちろんそれはそれでうまくいく場面もあるとは思うんですが、やはり問題の根本的な解決にはならない。

画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします

難しいところですが、「その人がうまく適応できなかった」という個人の問題として帰結させないよう、注意深くケアしなければなりません。問題は会社の側にあるのだから、会社に改善点をフィードバックしない限り同じことが何度でも繰り返されます。

また、そういう会社を存続させ続けることで、それがまかり通る社会に加担してしまうことにも繋がる。

とにかく、パワハラや労働問題は社会の問題であるということ、個人の話にしてはいけないということは、広く認識されていってほしいところです。

ハラスメント被害者の「その後」を追っていく

「個人の問題ではなく社会の問題である」と今野氏は繰り返し語った。
また、当事者のケアのためには根本的な問題解決以上に利するものはないということ、そのために必要なリアルな現場の知見を共有してくれた。

次回から、ハラスメント被害の当事者にインタビューをおこなっていく。その中で、彼女ら彼らがどのような「その後」の生活を送っているのかを傾聴するとともに、いかにして労働問題に苦しむ人の背中を押す情報を共有できるか、いかにして社会を前進させていけるかを考えていきたい。

ヒラギノ 游ゴ ライター/編集者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらぎの・ゆうご / Yugo Hiragino

ライター/編集者。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT