今野:本当に人それぞれですが、労使交渉がうまくいって前向きに回復していける方もいれば、なかなか回復せず労働に戻っていけない方もいらっしゃいます。ただ、どの方にも共通して言えるのは、相談に来てくれさえすれば、そのまま自分が悪いんだと思い続けることはないということです。
――それは非常に大きなポイントですよね。
今野:また、回復というのは個人の話にとどまらないと思っています。先程お話ししたカウンセラーが労災の知見を持っていない話とも繋がるんですが、心理的なカウンセラーにはストレスの原因である労働問題の解決ができないこともあって、相談者を耐えたり忘れたりするほうへ導きがちになります。もちろんそれはそれでうまくいく場面もあるとは思うんですが、やはり問題の根本的な解決にはならない。
難しいところですが、「その人がうまく適応できなかった」という個人の問題として帰結させないよう、注意深くケアしなければなりません。問題は会社の側にあるのだから、会社に改善点をフィードバックしない限り同じことが何度でも繰り返されます。
また、そういう会社を存続させ続けることで、それがまかり通る社会に加担してしまうことにも繋がる。
とにかく、パワハラや労働問題は社会の問題であるということ、個人の話にしてはいけないということは、広く認識されていってほしいところです。
ハラスメント被害者の「その後」を追っていく
「個人の問題ではなく社会の問題である」と今野氏は繰り返し語った。
また、当事者のケアのためには根本的な問題解決以上に利するものはないということ、そのために必要なリアルな現場の知見を共有してくれた。
次回から、ハラスメント被害の当事者にインタビューをおこなっていく。その中で、彼女ら彼らがどのような「その後」の生活を送っているのかを傾聴するとともに、いかにして労働問題に苦しむ人の背中を押す情報を共有できるか、いかにして社会を前進させていけるかを考えていきたい。
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