「引きこもってばかりいても、これはダメだなと思って、社外に出ていろいろな方と会ってみることを始めたのです。最初はどこに行っていいのかもわからず、とりあえずIT業界の展示会に。行っては、同業他社の人と名刺交換をしていました。競合の社員ですから、名刺を目の前で破り捨てられた思い出もあります(笑)」。
業界内で交友範囲が広がると、次にはIT分野のメディア人、他分野にも詳しいメディア人、ひいては業界外の企業人などへと、さらにつながりが広がった。柴崎さんは「そうこうしているうちに、IT業界の風景も会社の中から見るのと違うふうに見えて、いろいろなアイデアが出るようになり、仕事の幅も広がりました」と振り返る。
会社内でのキャリア形成は、何もかもうまく進んでいるという人のほうが珍しいものだ。挫折を味わった柴崎さんはふて腐れて会社を辞めるのではなく、籍を置いたまま社外に出て、「社外人(しゃがいじん)」としての能力を開花させていったのである。
まずは水面下で、したたかに
かくして、社外にネットワークが広がった。とはいえ、そのつながりを個人で抱えていても大きなビジネスには発展しない。柴崎さんが次にとった行動は、ネットワーク内の必要としている者同士をつなげることだった。その出会いをきっかけに新しいビジネスが生まれることや、結婚するまでの間柄になるケースも出てきたという。
「あるとき業界の先輩に『柴ちゃんはコネクターやな』と言われたことがありました。それを聞いて最初は結婚相談所じゃないんだから(笑)……と思っていたのですが、よくよく考えれば、ソーシャル・キャピタル(社会関係性資本)と呼ばれるような研究分野もある。人と人をつなげることは、それ自体とても重要なことだと思うようになりました」
そこで「コネクターの柴ちゃん」はひらめいた。人と人をつなげるなら、そもそも人が集う場をつくってしまえばいい。こうして生み出されたのが、冒頭で紹介した「あしたのコミュニティーラボ」だ。
すでに述べた通り、あしたのコミュニティーラボはウェブでの情報発信をしながら、個人と企業、企業と公共、公共と個人など、組織の垣根や物理的な距離を超えたつながりを生み、社会や地域などの課題解決を目指すプラットフォーム。これを立ち上げたからといって柴崎さん個人のサークルに終始しているなら意義は薄いが、富士通という巨大企業のビジネスに仕立てていったということに注目すべきだろう。
当初柴崎さんは、この構想を社内で大々的に打ち出すことはしなかった。発足時のメンバーは常務と自部門のメンバーのたった3人。そこから社内外のサポートしてくれる人たちを仲間に引き入れつつ、水面下でじわじわと仕組みを大きくしていったのだという。
すると面白いことに「(富士通の)内線で問い合わせが来るようになったのです。『あしたのコミュニティーラボってサイト、定期的に見ていたのですが、うちの会社で、しかも柴崎さんの部署でやっているのですか?!』という電話が何本もかかってくるようになって」。
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