元「負け組」社員が3万人のSE改革を担うまで 巨大組織・富士通を乗りこなす男の変人哲学

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そんな熱血行動派の柴崎さんだが、会社を窮屈に感じたり、辞めたいと思ったりしたことはないのだろうか。尋ねてみると、「実際、これまでにも5、6回転職しないかと話がありました。外部から見た自分の市場価値を知っておくことも大切だと先輩に言われ、人材企業に登録したこともあります」と、あっさり白状した。

ただ、と柴崎さんは続ける。「富士通という会社ではありとあらゆることができるとわかったんです。『ゆりかごから墓場まで』という言葉がありますけど、そういう意味では富士通はスマホからスパコンまで揃えていて、全世界で唯一と言っても過言ではないICTベンダー(情報通信技術提供企業)だと思うのです。大げさかもしれませんが」。

少しずつ変わり始めたSE部隊

大きな組織だと、自分が携われる範囲が限定されると考える人もいるだろう。しかし見方を変えれば、それだけ組織内に自分が携わったことがない未知のフィールドが広がっているとも考えられる。

著者は、会社の部門をまたいでキャリアを積むことを車線変更に因んで「社線変更」と呼んでいる。もし自分の今の居場所を窮屈に感じるなら、機を見て社線変更を試みるのもいい。「いい意味で上手に会社を使い倒すことを推奨したいです」(柴崎さん)。

現在のミッションは、富士通グループに約3万人いるSEの大改革だ。「会社全体がそうであるように、SEも『受託型』から『共創型』に生まれ変わらなければならない」(柴崎さん)。「あしたのコミュニティーラボ」を通じて開催しているハッカソン(ソフトウェア開発関連プロジェクトのコンテスト形式のイベント)では、社外の多様な人材の発想力や技術力に圧倒されることで「このままではいけない」と気づきを得る社員が増えてきているという。

だが柴崎さんは、「まだまだ道半ば。世のため、人のために良きことをするということが、ここ10年来の私の大きなテーマになっていますね」と笑顔で締めくくった。

さて、次回の変人さんは?

(写真:今 祥雄)

次回の変人さんは、とあるテレビ局のプロデューサーである。

「テレビ局だなんて、華やかで自由な仕事なんでしょ。もうなんかめちゃくちゃカラフルなパーカーだし、普通のサラリーマンと全然違うんでしょ」と侮るなかれ。すさまじい下積み時代を経て、ついに会社の「特命任務」を背負うまでになった男の物語を紹介する。

それではまた次回。合い言葉は、変人ウォッチ!

※ 次回掲載は2月13日(金)です。お楽しみに!

川下 和彦 クリエイティブディレクター/習慣化エバンジェリスト

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かわした かずひこ / Kazuhiko Kawasita

2000年、慶應義塾大学大学院修士課程終了後、総合広告会社に入社。マーケティング、PR、広告制作など、多岐にわたるクリエイティブ業務を経験。2017年春より、新しい事業を創造し、成長させることを標榜するスタートアップ・スタジオに兼務出向。広告クリエイティブに留まらず、イノベーション創出に取り組んでいる。著書に『コネ持ち父さん コネなし父さん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ざんねんな努力』(アスコム)などがある。(撮影:原貴彦)

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