海外留学は英語力向上にどこまで有効なのか 新卒全員を送り込んだ、先進企業が得たもの

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カナダのバンクーバーに留学した不二越の若手社員

少子高齢化、人口減が進む中、日本企業はおのずと海外に目を向けなければならず、ビジネスパーソンにも英語は必須だ。1月9日配信の「公用語化でどうなった?楽天社員の英語力」で取り上げた企業内の英語教育は、実際に英語を話すときに備えた、いわば基礎体力作り。さらに踏み込むのが海外留学だ。

富山県に本社を置く産業機械メーカーの不二越。週刊東洋経済2015年1月10日号の特集『最強の英語力』でも一部触れたが、不二越の海外留学に対する取り組みは、日本企業の中でもかなり先進的だ。

同社はかねてから、2020年度に年間売上高を4000億円に引き上げ、そのうち6割を海外向けで占めることを標榜している(2013年11月期実績は年間売上高1756億円、海外売上高比率は4割)。その一環で始めたのが、2012年以降入社の新卒社員全員を対象とした、海外留学制度だ。具体的には毎年50人規模を9月中旬から約2カ月間、アメリカ、カナダ、イギリスの3カ国、計10カ所以上の学校に送り出している。1つの学校につき、毎回3~4人の社員が在籍している。

効果はてきめんだ。留学前と留学後を比べて、対象新卒社員の平均TOEICスコアは575点から、650点に上昇。TOEICスコアだけではない。経営管理部長の坂本淳氏は「海外留学制度は社内にグローバル企業としての風土を根付かせる狙いもあるが、実際に送り出した新卒社員たちは、異文化を理解したり自らの意見を持って発言したりといった国際感覚が取得できている」と解説する。

日立は毎年1000人規模で若手社員を海外に派遣

日立製作所や東日本旅客鉄道(JR東日本)のケースも興味深い。

日立製作所は20~30代前半の若手を対象に、2011~2013年度の3カ年で毎年1000人規模の社員を海外へ派遣。単なる留学だけでなく、異文化体験や日立グループ内外の企業、現地NGO等でのインターンシップ、現地語学学校での語学研修など約80コースを用意している。派遣国は東南アジア各国・インドをはじめとする新興国や中国、米国、欧州で、期間は最長3カ月に及ぶ。

今後は半年間のプログラムも予定しているという。「事業のグローバル化に伴い、これまでよりもずっと多くの従業員が、仕事で海外とかかわったり、異文化の多様な人財とともに仕事をするようになったりしている。若いうちに海外に出て、異文化の中でタフな経験を積むことで、グローバル化を肌で感じてもらうことを目的としている」(日立広報部)。

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