海外留学は英語力向上にどこまで有効なのか 新卒全員を送り込んだ、先進企業が得たもの

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一方、JR東日本の海外留学制度は歴史が古い。1991年から「財務トレーニー制度」として約1年間1~3名を対象に、国内外の銀行・証券・保険会社等の金融機関において、金融財務の実務研修をイギリス、アメリカ等で行っている。そのほか、より広範な社員を対象に1992年から、2年を上限に毎年10名程度をイギリス、アメリカ、アジア圏等へ派遣している。

週刊東洋経済2015年1月10日号(1月5日発売)の第一特集は『最強の英語力』では、一流英会話講師や経営者などによる、個人のオススメ英語学習法についての解説を豊富に掲載している。

2013年から、「海外体験プログラム」という短期留学制度も始まった。実施期間は3カ月だが、対象規模は120名程度と大きい。対象国は既存のものと同じで、イギリス、アメリカ、アジア圏からなる。JR東日本は12年10月に発表した経営構想の中で社員育成プログラムを規定しており、海外体験プログラムはその一環だ。

「このプログラムで職場から離れた舞台で知識や経験を求め、自らの能力を磨き、可能性を広げるべく多くの社員に意欲をもって取り組んでもらいたいと考えている。そうすることで、多様な人材を有する企業に成長することができると考えている」(JR東日本広報部)という。

日本人の英語力は世界的に低い

こうした日本企業の“海外留学熱“を敏感に感じ取っているのが、海外留学のサポート会社だ。世界52カ国以上、500以上の事業拠点がある大手、イー・エフ・エデュケーション・ファーストの日本法人は、2011年10月からイギリス・ロンドンやアメリカ・シカゴの語学学校向けに25歳以上しか参加できない、「社会人専用」の語学留学プログラムを開設。これまで顧客は大学生中心だったが、最近は法人顧客の獲得にも力を入れている。

同社の中村淳之介社長は「日本企業が社員に海外で語学留学をさせたい、という意志を最近は強く感じる」と語る。同社は2014年4月、全日本空輸株式会社(ANA)と業務提携も締結。ANAの客室乗務員を含む全社員のグローバル対応力向上に向けた、語学学習教材やオンライン語学研修の提供などを行う。

よく言われるように、日本のビジネスパーソンの英語力は世界的に見て、高くない。イー・エフ・エデュケーション・ファーストが2014年11月に発表した文法・語彙・リーディング・リスニング等の能力を測る世界各国の英語能力調査では、日本人の英語点数は調査対象となった世界63国・地域の中で26位だった(18歳以上の成人75万人が受験)。TOEICスコアで見ても、日本の順位は低い。国際ビジネスコミュニケーション協会が13年に年間を通じて調査し、約528万人が回答したアンケートによると、日本人の平均スコアは512点で48カ国中40位にとどまっている。

ここで触れた3社のような動きはまだ一部にすぎない。先進事例に習い、社員個人の努力のみに頼らず、社内教育や海外留学制度などの支援体制をどれだけ充実させられるかが、海外展開に活路を求める日本企業にとっての課題といえるだろう。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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