30歳がんで逝った男が遺した闘病2年半の生き様 棋士目指し最後まで勝負師だった天野貴元のブログ

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余命について『オール・イン』では「あと10年もない」と予測していたが、はるかに短いタイムスケールが突きつけられた。ここで気持ちが折れかける。しかし、現況から最善手を探し出す勝負師としての生き方が気力をつないだ。3日後の投稿。

<1つわかった事は、このまま普通に過ごしていれば、そう遠くない将来死ぬって事です。しかし、何をやっても死ぬのであれば、自分は積極的に動いて死ぬタイプだと思いますし、非常に厳しい状況ですがそんな中でも色々やって、最後までベストは尽くそうと思います。私が死ぬのは仕方がないにしても、次のガン患者が助かるような、未来につながる生き方をしていければ理想ですね☆>
(あまノート/2014年5月24日「落ち込む暇があるのなら、さらなる高みへ」)

抗がん剤治療を継続しつつ最新の放射線治療を受けることを決め、社会でも新たな取り組みを始める。少し前に日本将棋連盟の下部組織として天野支部を立ち上げており、支部活動の一環としてアマチュアの将棋イベント「天野杯」を実施するようになった。

プレーヤーとしても、アマチュア最高峰の全国大会に積極的にエントリーしていった。そのチャレンジが大きな実を結んだのは2014年11月9日のこと。しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会の将棋部門で優勝を果たした。

<赤旗名人戦全国大会。
ついに、ついに優勝しました!! 日本一なう!!!!
たくさんの方に応援して頂き、そして支えて頂きまして、本当にありがとうございます!!>
(Twitter/2014年11月9日)
優勝を報告するツイート

赤旗名人になると、プロの公式戦である新人王戦に参戦できるほか、奨励会の三段リーグに編入する試験を受ける権利も与えられる。プロの道はすでに諦めている。けれど、勝ち取った機会をふいにすることは勝負師としてできそうにない。1カ月後に行われた新人王戦で敗れたあと、天野さんは三段リーグ編入試験の正式な手続きを始めた。

「それでも指せる将棋っていうゲームは、ある意味凄い」

編入試験は2015年2月7日から3月15日にかけて行われることに決まった。1日2局を4日。8局中6勝すれば編入決定、3敗すればその時点で終了となる。実力でたぐり寄せた晴れ舞台だ。しかし、病魔は勝負師の都合を考えてはくれない。

<本日、緊急入院する事になりました。
4日前ぐらいから左上半身があまりにも痛すぎて、自宅療養をしていたんですが、全く良くなる気配がないので今日検査してもらったんですが、即入院を宣告されました。>
(あまノート/2015年1月20日「緊急入院のご報告」)
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