原因不明。だが、頭を掠めたのはこれまでの生活だ。ブログでも何度か言及している。
(あまノート/2014年3月25日「失敗こそ、人生の醍醐味」)
喫煙も飲酒もギャンブルも中学生の頃に覚えた。プロになれなかった要因に遊びすぎがあったのではとも分析している。とにもかくにも、生きるには舌の摘出手術を受けるしかない。手術前に大恩のある棋士に挨拶に出向くと、「われわれは将棋は諦めが早いですが、人生は粘り強くいきましょう」という言葉をもらった。
「ハンデがあっても何とかなると思います!」
手術は無事成功した。手術の傷が治るのを待ってリハビリや抗がん剤治療、放射線治療などが行われ、入院期間は100日に及んだ。
舌がないと食事にとても時間がかかり、つばを飲み込むことも難しい。どれだけリハビリしてもサ行やラ行などはもう発声できない。抗がん剤治療では「昨日初めて奇声をあげながら吐いてしまった」「体中の体力を全て奪われ、今は寝たきり」と、そのつらさを率直にこぼしている。
ただ、それらの現況報告に喪失感や後悔の類いはほとんどなかった。
それはできなくなった事はたくさんあるんだけど、とはいえできる事はあるという事。
選択肢が限られた人生の中で、好きな物を選んだり、好きな事をして働いたり、好きな人と恋したり。全然できるんだなっていうのを感じましたし、まだ社会復帰してませんけどハンデがあっても何とかなると思います!>
(あまノート/2013年5月28日「最近思う事」)
舌がなくても味は感じられたし、ミニホワイトボードを併用すれば込み入った話もできた。電車で移動中のよだれは口の中にティッシュを詰め込んでマスクをすれば何とかなった。治療はつらいが、それ以上でもそれ以下でもない。
そうした結論にいたるまでの苦悩がほとんどなく、厳しい現実を受け入れるスピードがとにかく早い。そこに天野さんの独特さを感じる。
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