30歳がんで逝った男が遺した闘病2年半の生き様 棋士目指し最後まで勝負師だった天野貴元のブログ

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がんの肺転移が原因であれば、もうすべてのことを断念しなければならないだろう。しかし検査の結果、新たな転移は見つからず、対症療法で痛みを抑えることで退院することができた。予断は許されないが、編入試験を受けることはできそうだ。

初日の2月7日は和装で挑んだ。結果は1勝1敗。翌週の2日目も1勝1敗で後がなくなったが、3月7日に行われた3日目は連勝して望みをつないだ。そして最終日の3月15日は1局目で敗れた。結果は4勝3敗。勝ち越してはいるが、三段リークの編入は実現しなかった。

<死力を尽くして戦っただけに、ただただ残念です。今日だけは勝ちたかった。
たくさんの方に支えて頂きまして、本当にありがとうございました。今はショックで何も考えられません。>
(あまノート/2015年3月15日「結果が全ての世界」)

挫折は大きく、もうプレーヤーとしてのチャレンジは区切りをつけるべきかと半ば本気で考えたようだ。この頃、アマチュアの嬉野(うれしの)宏明さんによる奇襲戦法を解説する戦術書『奇襲研究所 嬉野流編』を執筆しているが、まえがきは「私は以前プロ棋士を目指していました」の一文から始まっている。

2冊目の著書『奇襲研究所 嬉野流編』(マイナビ出版)

同著は自ら編集部に企画を持ち込んだ。その後も「奇襲研究所」としてシリーズ展開する構想があり、蓄えて育てた知見を多くの人に伝える意欲がのぞく。

アマチュア主要大会への出場はやめず

それでも最終的にはアマチェア主要大会への出場はやめなかった。5月下旬には「アマチュア竜王戦 東京予選」、6月初旬には「関東アマチュア将棋名人戦」でそれぞれ優勝している。左肩が慢性的に痛み、せき込みもひどくなってきた。体調不良で出場を見合わせることも増えたが、それでも戦い続けることを選んだ。

勝負師としていまある最善手を選んで勝ちをたぐり寄せる。しかし、観測される現状は厳しさを増し、選べる手は次第に少なくなっていった。6月中旬には「がん細胞がかなり悪化していることがほぼ間違いない」と告げられた。体調が優れず、東京代表となったアマチュア竜王戦の全国大会は予選で連敗して敗退している。

<あまりにも情けない言い訳ですが、呼吸が苦しくて、頭が回らなくて、駒がよく見えてなかった。ずっと、ずっと楽しみにしていたアマ竜王全国大会だったのに、俺は今日、何もしていない・・・。
こんな形で終わってしまい、恥ずかしくて、悔しくて、情けなくて。涙が止まりません。>
(あまノート/2015年6月20日「肺炎の現実」)
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