茨城サザコーヒー、たった16店で放つ存在感の神髄 都内4店目の新橋出店、「徹底した差別化」の裏側

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同年11月12日と13日に各店舗で開催された「第3回パナマゲイシャ まつり」では、焙煎した同じ豆を1/4分量のミニカップ(9000円相当)にし、1杯「500円」で提供。SNSでも告知した。都内の店では行列ができ、テレビの取材も入るほど人気を呼んだ。

「社長は、『このコーヒー豆は、コーヒー好きのみなさんに価値を楽しんでいただくものだから、採算を考えずに提供しよう』と話していました」(同社の従業員)

サザコーヒーKITTE店の「パナマゲイシャ まつり」では行列ができた(2021年11月12日、筆者撮影)

厳しいご時世に大判振る舞いだが、別のイベントでは高級コーヒーを来場客に振る舞うことも多い。名物の“タダコーヒー”で、これも同社のファンを増やしてきた。

本拠地・ひたちなか市に新工場も稼働

2021年秋には地元ひたちなか市に新工場も竣工し、稼働している。

「この工場には最新鋭のコーヒー焙煎機を導入しました。2台のドイツ・プロバット(PROBAT)社の半熱風式焙煎機(60キロ)で減圧しながら加熱し、香りを閉じ込めます。直接産地で選び、仕入れたコーヒー豆の持ち味を生かしながら焙煎できます」(同氏)

もうひとつの特徴は、1杯取りドリップパックのコーヒー豆の賞味期限を1年から3年に延長させたこと。「袋から酸素を抜いて光を遮断する技術によって、酸化と風味劣化を遅らせることができた」という。太郎氏は現在、筑波大学大学院の博士課程で、「焙煎後のコーヒー豆の保存方法と品質劣化」を研究中。その成果を新工場にも取り入れた。

相次ぐ投資で採算面はどうなのか。実は2020年度の同社決算は黒字を確保した。あのスターバックスですら同年は赤字決算となったが、「サザコーヒー強し」を印象づけた。

「旗艦店の本店までも影響を受けましたが、従業員が奮闘し、イベントやネットで家庭用コーヒー豆の販売に一段と注力したのです。オンライン販売は前年比4倍増でした」(同氏)

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