芸能人の自死関連報道は絶対に見てはいけない訳 臆測混じりの推察は危険、「相談窓口」誘導への疑問

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たとえば、今回の上島さんの関連報道でも、ほとんど情報がなかった11日の段階から、リポーターを自宅前に向かわせたり、専門外で親交がないコメンテーターたちに語らせたりなどの内容の薄いシーンが目立ちました。

これは情報番組の制作サイドが、「長尺で扱うほど全体の数字が上がる」「できるだけ長い時間放送しよう」と考えているからにほかなりません。事実、これまで芸能人の自死に関わるニュースがあったとき、ある情報番組のプロデューサーと編成担当から直接そのような本音を聞いたことがあります。

メディア側も批判を避けるために、以前よりも関係者への取材を減らし、感動寄りの内容を増やすなどの配慮を見せるようになりました。ただ、彼らも仕事とは言え、極めてセンシティブな内容だけに、「配慮すればいい」というものではないでしょう。

特に今回は、妻の広川ひかるさん、ダチョウ倶楽部の肥後克広さんと寺門ジモンさん、「竜兵会」の有吉弘行さん、土田晃之さん、劇団ひとりさんらがコメントすら出せない状況だけに、憶測混じりの報道を重ねることは明らかに過剰。偉大な足跡を語り、故人を偲ぶのはもう少し先でいいはずであり、あまりにビジネスの要素が強すぎるのです。

自死が「ありえる」に変わる怖さ

そんなメディアの報道姿勢よりも怖いのは、「本来自分とは縁遠いものだったはずの自死が少しずつ身近なものになってしまう」こと。好き嫌いを問わず知っている人の自死には、少なからず自分への影響力があり、上島さんのような有名人であればなおのことでしょう。

たとえば、「自分は自死なんてしない」と思っている人も、「あんなに明るい人で仕事や人望もあった人なのに」という意外性を感じてしまうと、心の奥に「自分もそういう可能性はあるのか?」という小さな疑問が芽生えてしまうものです。

あるいは、「自分たち一般人と同じような悩みがあったのかな」などと親近感を抱いてしまうことは、もっと危険。自死の連鎖につながるリスクが高まります。いずれにしても、自死報道を見るほど、心の中に少しずつ自死という選択肢を植え付け、それを選ぶリスクを高めてしまいかねません。

次ページ「起きたばかりの事実」であり「芸能人は知っている人」
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