芸能人の自死関連報道は絶対に見てはいけない訳 臆測混じりの推察は危険、「相談窓口」誘導への疑問
そんな心理状態の根底にあるのは、自死報道がショッキングなだけでなく、「起きたばかりの事実」であり、「芸能人は知っている人」だから。縁遠かったはずの自死が、自分にも起こりえる可能性がある生々しいリアルなものとして心の奥に認識されてしまうのです。
これまで何度か、家族、友人、恋人が自死した相談者さんの悩み相談を受けてきましたが、ほとんどの人が「自死なんてする人ではないと思っていた」などとショックの大きさを語っていました。また、ある人は「本当に自死するつもりはなく、衝動的だったのかもしれないし、だから『自分はない』とは言い切れない」と言っていたのです。
つまり、身近な人が自死を選んだ場合、「周囲の人々にこんなに悲しい思いをさせてしまうのだから自分は絶対にしない」と思う一方で、「選択肢の1つとして心に刻み込まれてしまう」ということでしょう。「ありえないもの」が知らぬうちに「あるかもしれないもの」に変わり、「もともとすべての人間が自死という選択肢を持っている」ことを自覚してしまうのです。
日ごろ相談を受けていると、悩みの程度が軽い相談者さんの中にも、「『死んだら楽になれるかな』と思ったことがある」という人が少なくありません。「死んでしまいたい」とまでは思わないけど、「死んだら楽になれるかな」という思いが頭をよぎる人たちがいるのです。実はそれくらい自死は身近なものだけに、できるだけ遠ざけておかなければいけません。
余談ですが、人々の悩み相談を受け続けてきた私は、自死という選択肢が頭の中に刷り込まれていて、これを消すことはもはや不可能でしょう。だから、たとえば肉を食べるときや、虫を退治したいときに、毎回ためらってしまうほど、つねに生と死に向き合いながら生きることで、その選択肢を遠ざけようとしています。
ファンでなくても連鎖はありうる
そしてもう1つ、みなさんに覚えておいてほしいのは、目につかないところで自死の連鎖が起きていること。身近な人に先立たれたとき、人は自死というものを強く意識するようになりますが、芸能人の自死に関しても連鎖がつきものであり、一般人への連鎖は報じられないだけで静かに進んでいきます。
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