アバター動かし重度障害児が「オンラインゲーム」 視線入力やスイッチ操作を通じて新しい発見も

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研究室のホームページ「ポランの広場」では、2014年からパソコン入力用のスイッチやジョイスティック操作、視線入力を訓練するためのソフトウェア20種類を公開している。ソフトウェアは研究の成果物として、誰でも無料で利用できる。

ポランの広場のホームページ。URLはこちら

訓練するためのソフトウェアとは、どういうことか。

「最初に鉛筆を持つとき、その使い方を練習するように、スイッチやジョイスティック、視線入力も、適切な訓練が必要となります。斜視があっても目の揺れがあっても、訓練することで目の動きがよくなったり、物を見る力がついたりする可能性はあります」と伊藤さんは説明する。

視線入力を訓練するための「EyeMoTシリーズ」は、2~3歳から遊べる。前述の悠翼さんが楽しんでいた風船割りゲームのほか、射的ゲーム、対戦ぬり絵ゲームなどは、ビジュアル的にハッキリした色のデザイン、親しみやすく動きのあるキャラクター、にぎやかな音楽が特徴で、子どもたちを飽きさせないように工夫されている。

EyeMoTシリーズは、2017年、世界の教育コンテンツの質の向上を目的に教育の可能性を広げる優れた作品に対して賞を贈るNHK主催のイベント「日本賞2017(主催・日本放送協会)」の「クリエイティブ・フロンティア カテゴリー」で最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

受賞理由は「初心者でも簡単に使えるソフトウェアで、誰もが成功する喜びを体験でき達成感を得られる」だった。伊藤さんは「子どもの成功体験が次へのステップを進める」を大事にしている。

重度障害の潜在能力を客観的に可視化

できわかクリエイターズの引地さんも、伊藤さんの講習会に参加したことで視線入力を知った。そのとき、「ソフトウェアを通して、重度障害と診断されている人の潜在能力を客観的に可視化できる」と聞き、すぐ伊藤さんを勤務先に招いて、センターの入所者に試してもらった。

EyeMoTシリーズでは、ユーザーの視線が動いた軌跡や、そこに視線を何秒向けたかなどが表示できる。カードや絵、写真を選ぶ場合は異なる組み合わせを提示して、偶然でなく、本人が意図的に操作していることが確認できる。

そこで、引地さんは病院スタッフとともに、院内の「寝返りができず、日常生活での簡単な言葉も理解できない(⋆2)」と判定された16人(6~64歳、平均年齢34.4歳)にEyeMoTゲームをしてもらった。16人は脳性麻痺、急性脳炎後遺症、溺水後の後遺症など、いずれも脳疾患による障害があった。事前に、それぞれの人の目の状態について、何かを「見ている」「見ていない」「どちらとも判断できない」と分けた。

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