その結果、支援者が「見ているかどうか判断できない」「見えていない」と判断した人を含めて、15人が見えているだけでなく、標的に視線を向けることができた。4人は追視もでき、見る機能の高さを評価できた。
この研究は、2019年、重症心身障害療育学会学術集会において「第15回読売療育賞」の最優秀賞(当時の名称)を受賞した。
伊藤さんはこう強調する。「テクノロジーを通して、潜在能力を客観的に可視化することで、家族も支援者も『もっと、こうしたら反応があるのではないか』と子どもたちに積極的に働きかけるようになります。子どもの可能性を信じていない場合、寝かしたままのこともあるため、いかに可視化することが重要か、私たちも驚きました」
視線入力装置を普及させるために…
特別支援学校でもICT機器を用いたコミュニケーション方法を教えているが、装置や機器の導入状況には格差がある。視線入力装置は、2014年ごろからゲーム用として安価な製品が市場に出てくるようになった。伊藤さんや引地さんらはその使い方を普及させるために、積極的に活動している。
このほか、特別支援学校の教員が集まる「マジカルトイボックス」(代表・帝京大学教育学部 金森克浩教授)では、教員や保護者、支援者向けにICT機器の使い方の研修を開催している。
このような活動が広がることで、重度障害児者も家族もさらに豊かな人生を送ることができる。
⋆1 主に日常生活の応用動作(着替え、歯磨き、洗顔、食事、排泄、入浴、外出、就労など)がスムーズにできるようリハビリテーションを指導・支援するほか、福祉用具の選定や使用の訓練、住環境整備などを担当する職種
⋆2 引地晶久、他[2021],「横地分類A1の重症心身障害児(者)の潜在能力を視線
入力装置で探る」『重症心身障害児の療育』16巻1号,pp.1-5(研究では「横地分類A1の脳原性疾患を基礎疾患とする重症児者」に協力していただいた)
参考文献 伊藤史人[2017],「視線入力装置入門」『はげみ』,6・7月号(374号),pp.4-17
伊藤史人[2018],「視線入力装置入門2『はげみ』,6・7月号(380号),pp.4-22
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