「社会への違和感」が強いビジネスを生み出す理由 山口周さん×中川淳さん対談(2回目)
限界集落に人を集める価値転換
山口:そういえば、新潟の竹所という限界集落に移り住んだドイツ人の建築家がいるんです。誰から頼まれたわけでもなく、廃墟になりかけていた古民家の再生をやり始めたんですが、それに全国から買い手がついて、移住する人が増えているんですよ。
中川:限界集落の人口を増やすのはすごいですね。
山口:これも、ある種の価値判断の転換が起きてしまっているんですよね。ただ単に民家や家具といった「モノ」が求められているのではなくて、全体のシステムとして、生きざまや人との関係性、消費のあり方などが見つめ直されている。やはり、ヒューマニティーに根ざした真に素敵なものを見せられると、そこに強い魅力を感じる人がある程度の規模で現れるんだと思います。
そのドイツ人建築家、カール・ベンクスさんに言わせると、日本人はこんなすばらしい素材の家を捨てて、ゴミみたいな家ばかり建てている。でも彼が再生した民家は、これから何百年も保つし、しかもいまは高断熱の素材も使えるので、ものすごく快適らしいです。
こういう話がポツポツといろいろなところで出てきているので、ちょっとずつ時代は動いているように感じるんですよ。
中川:奈良の南のほうにも限界集落がいっぱいあって、お手伝いさせてもらっています。行政のアプローチは散発的でなかなかうまくいかないので、全体を体系化するためのアドバイスをしているんですよ。
そこで最初に提案したのは、このままでは各プロジェクトがバラバラになってしまうので、奥大和と呼ばれるその地域全体のビジョンをつくりましょう、ということ。それでつくったのが、「奥大和に新しい郷(クニ)をつくる」というビジョンです。そのビジョンを形にするには、インフラも経済も必要になるので、全体の設計図を描いていろいろな取り組みを始めようとしているところです。