「社会への違和感」が強いビジネスを生み出す理由 山口周さん×中川淳さん対談(2回目)

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山口:行政からコンサルタントとして依頼が来るんですか?

中川:講演などの依頼から始まることが多いですね。でも講演で話したことなんて、1年か2年で消えてしまうじゃないですか。そういう関わり方では意味がないので、その後もアドバイザーのような形でつきあっています。

行政の人たちもその地域をよくするためにいろいろやってはいるんですが、その場の思いつきで面白そうなことをやるだけで、全体を構造的に考えようとはしないんですよね。

だからまずはビジョンをしっかりとつくって、それとのつながりを考えながら個々の案件をやってもらうんです。

これは個々の地域で「モノ」をプロデュースするようなことだけでは変えられないんですよね。もっと広い範囲にわたって、大きな枠組みを変えなければいけない。僕がコンサルタントとしてよそ様のお手伝いをしているのも、うち1社だけで変えられる話ではないからです。それがどんどん広がっていくと、いずれは国のあり方を変えるような話にもなっていくでしょう。

ビジョンは時代や社会への違和感から生まれる

山口:竹所への移住者が増えていることなどを見ても、すでに価値観の転換へ向けた時代の文脈は生まれつつあると思っています。

僕が「美意識」をめぐる本を書いたのは2017年ですが、当時は「ロジカルに思考すべし」みたいなビジネス書ばかり売れていたんですよね。だから、「山口さん、次はどんな本を書いているんですか」とか「いま興味のあるテーマは?」などと聞かれたときに、なんとなく気恥ずかしくて答えにくかったんですよ。

「経営における美意識とか、消費者としての美意識みたいなテーマなんですけど」と答えると、相手がいたたまれないような顔になってしまって(笑)。当時は誰もがそんなテーマは受け入れられないと思っていたし、本も売れないと思っていたんです。でも出してみたらちゃんと届くべき人たちに届いたので、やっぱり真面目に仕事したほうがいいな、と思い直しました(笑)。

でも、いまでこそ急速に「経営におけるアート」みたいなことが言われるようになってきましたけど、もっと早く2010年ぐらいに出していたらまったく注目されなかったでしょうね。逆に、去年か今年ぐらいに出していたら、「そんなのとっくにみんなわかっていますけど?」みたいな反応になっていただろうから、然るべきタイミングで世の中に打ち出していくのは大事なことだと思います。

中川:それは商品でも何でもありますよね。早ければいいわけではない。

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