創業300年・中川政七商店が「違う土俵」へ行けた訳 山口周さん×中川淳さん対談(1回目)

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中川政七商店の中川淳氏と独立研究者の山口周氏が語り合います(撮影:香川優子)
ビジョンの重要性が以前にも増して注目される今、「ビジョンは経営資源であり、人生の武器になる」と喝破するのが、中川政七商店の中川淳氏と独立研究者の山口周氏だ。
2007年より「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、工芸をベースにした生活雑貨の企画製造・販売や、業界特化型の経営再生コンサルティング、また近年ではスモールビジネス支援で地域を元気にするまちづくりなどにも事業を展開する中川政七商店。同社の新規事業立案や事業の意思決定はすべて、先のビジョンがベースとなっている。
経営者、リーダー、そして1人ひとりが仕事のうえでビジョンとどう付き合うのか。『ビジョンとともに働くということ』より一部抜粋、再構成してお届けする。

ビジネスの世界で注目される「ビジョン」

山口:いまビジネスの世界では、組織が追求すべきビジョンを掲げることの重要性や、それをいかにつくるかということが注目され、さまざまに議論されています。それは、資本主義や企業活動そのものが21世紀に入った頃から大きな転換期を迎えているからでしょう。

もちろん、企業は利益が出なければサステイナブルに活動できません。これまでは、環境を破壊するような大量消費社会のなかで利益を出すことで、かろうじて経済が成り立ってきました。その状態から、どうやって社会を次のステージに持っていけばいいのか。中川政七商店は、ビジョンファーストで、この問題に会社として思い切りチャレンジしているわけです。

中川:うちの会社はかなり独自な形でやっているし、業界としても非常にニッチなので、お手本にできるような会社が世の中にあまり見当たりません。

たとえば中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げていますが、この言葉だけを見ると、お客さんのほうを向いていない。僕自身はそのほうがいいと思ったからこれを会社のビジョンにしましたが、たいがいどの会社もお客さんのほうを向いた言葉を掲げています。

山口:たしかに、言われてみればお客さんに向いてないですよね。

中川:そうなんですよ。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンは、完全に商品のつくり手のほうを向いた言葉です。もちろん結果的には、元気になったメーカーからお客さんのところに価値のある物が届くわけですが、そこは言葉にしていないんですよね。

次ページ中川政七商店のビジョンが出てくるまで
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