「海の森水上競技場」が負の遺産を回避するカギ 五輪施設の課題点は認知度向上とアクセス改善

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「ボート体験やフィットネス体験、東京湾の景観を見に来るといった方にしてみれば、丸1日滞在するわけではないので『1日1000円というのは高すぎる』という声が出るのもよく分かります。こちらとしても、イベントのない平日は半額にするなど、柔軟な対応を早急に検討し、実施していくつもりです。

いずれにしても多くの人に足を運んでいただかないと何も始まらない。そうなるように我々もできることに着手していきます」と荒澤所長も改善策を模索している様子だ。

施設周辺には何もないというのが率直な印象だ(筆者撮影)

もう1つの課題は飲食。大型連休中はキッチンカーが出ていたが、通常時は飲料の自動販売機しかない。売店を設置することも検討しているようだが、「全てはニーズ次第」(荒澤所長)という状況だ。

食堂も現在は稼働しておらず、ボートやカヌーのトレーニングで訪れる選手たちも弁当持参で来場しなければ何も食べられない。

早期に多くの人が日常的に訪れるようになれば、売店設置や食堂の営業も現実味を帯びてくる。そうなることが東京都、指定管理者である海の森水上競技場マネジメント共同企業体にとっての理想的なシナリオという。

順調にいくかは稼働状況次第

このような形で新たな一歩を踏み出した同競技場。再開業前に想像していたよりは有効活用できそうな印象はあったが、本当に順調に行くかどうかは今後の稼働状況次第だ。

1998年長野冬季五輪でボブスレー・リュージュ・スケルトン会場として使われた長野市ボブスレー・リュージュパーク(愛称=スパイラル)のように20年後に休止という最悪の結末に至らないように、まずは「開放感のある眺望の素晴らしい施設」という利点を幅広く告知することだ。

都民や近隣の千葉県や神奈川県の人々に足を運んでもらうような仕掛けを展開してほしいものである。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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