しかし『ちむどんどん』に向けられる最大の期待は、羽原大介による脚本である。具体的には先に書いた「暗黒」=貧困の背景となる戦争をどう描くかへの期待だ。
戦争について、現段階(第13回まで)では、具体的に語られていない。ただ早々に、1週目の第2回で、今後の展開を示唆する会話が挟まれていた。
まず、大学教授役の戸次重幸が、「戦時中、陸軍の幹部候補生で、沖縄の部隊にいたんです。でも米軍が上陸する前に配属替えになって」「今でも時々申し訳なく思うことがあります。生き残ってしまったことを」「私は子供に、そのまた子供にと、沖縄のことを語り継いでいく。それが生き残った私の使命です」と語る。
対して、大森南朋(主人公の父親)が、「自分は中国をあっちこっち……」「自分も生きている限り、謝り続けないといけないと思っています」と返し、また仲間由紀恵(母親)が那覇で空襲に遭ったことを告白し(いわゆる「10・10空襲」のことだろう)、泣いてしまうシーンがあった。
羽原大介という脚本家への期待
期待したいのは、「アメリカ、日本(ヤマトンチュ)、中国との関係性の中での沖縄史」をしっかりと描くこと。というのは、羽原大介という脚本家は、日本を軸とした国籍・民族的対立を描く達人だからだ。
彼が手掛けた朝ドラ『マッサン』(2014~2015年)では、太平洋戦争下の日本における外国人(敵国人)として、特高(特別高等警察)に追い詰められたシャーロット・ケイト・フォックス演じる主人公が放ったセリフが忘れられない(第119回)。
――「どうしてここにいてはいけないのか私に分かるように教えて下さい! 私が日本人ではないからですか? この鼻ですか? この髪の毛ですか? この瞳ですか? 私は亀山エリーです。あなたと同じ人間です。私は亀山エリーです! 私にはこの国に愛する夫がいます。愛する娘がいます。ここには私の家族がいます!ここは私のふるさとです!」
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