第一の期待は、主演の黒島結菜に向けてのものである。
NHKのドラマを好んで見ている人なら、彼女が主演した『アシガール』(2017年)が印象に残っているはずだが、個人的にはそれよりも、同じくNHKの朝ドラ『スカーレット』(2019~2020年)と『いだてん』(2019年)が印象深い。
『スカーレット』では、ヒロイン(戸田恵梨香)の夫(松下洸平)に言い寄り、不倫寸前にまで至る三津という難役をこなしていた。三津の魔性的な魅力に目を見張った人も多いのではないか。
『いだてん』では、大正時代、まだ女性が素足を見せることがはばかられていた頃、女子陸上大会のハードル走で、いきなり靴下を脱ぎ、素足で走る女子学生=村田富江を見事に演じていた。
三津と村田富江の共通項は、自我の強い奔放な女性像。鋭い目付きから強い自我を発光させる黒島結菜は、このような役柄がよく似合う。
そんな彼女に近い持ち味の女優としては、『エール』で好演した二階堂ふみが思い当たる。ちなみにこの2人、共に沖縄出身で、同じ事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)。
黒島結菜の沖縄に対する思い
共通点はそれだけにとどまらない。私が2人に好感を抱くのは、朝ドラを主演するにあたっての意識の高さだ。黒島結菜は『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説ちむどんどんPart1』(NHK出版)のインタビューでこう語る。
――2022年は沖縄が本土に復帰して50年という節目の年です。これまでも自分で資料館に行ったりして、沖縄の歴史を知ろうとしてきましたが、過去をどう未来につなげていくか、改めて考えるきっかけになりました。
これは、同じく『エール』の『NHKドラマ・ガイド』で、「今回、朝ドラのヒロインオーディションを受けたのは、沖縄戦を体験している自分の祖母をはじめ、その時代を生きた人たちの思いを大事にしたい、という気持ちが自分の中で高まっていたというのが理由のひとつなんです」と語った二階堂ふみとつながる。
2人とも、沖縄という土地の歴史と、そこに生まれた自我をしっかりと意識して、朝ドラに向かっている。何と好ましいことだろうか。
加えて、黒島結菜とともに姉妹を演じる2人にも期待が尽きない。
長女役の川口春奈は、2018年大晦日に放送された日本テレビ系『絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!』の見事な「キレ芸」で、コメディエンヌとしての才を発揮して以来、その「芸能運動神経」を注目している。また、三女役の上白石萌歌については、音楽好きという役回りになっていて、予告編で『翼をください』を歌っているシーンに惚れ込んだ。次女・黒島結菜をもり立てる、最強のトライアングルを見せてくることだろう。
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