日銀には「21世紀型の金融政策モデル」が必要だ 世界中の中央銀行の金融政策は今や「時代遅れ」

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第2の理由は、物価と景気変動の連動性が小さくなってきたことである。これにはさまざまな理由がある。今回は深く議論できないが、世界的な供給者の増加により、消費財市場における価格上昇が起きにくくなっている(資源や食料などの必需品は除く)。

その一方で、広範囲での独占的な企業の成立やブランド確立などにより、高級消費財市場においては企業の価格支配力が高まり、価格下落も起きにくくなっていることから、消費財全体で見ても、価格変動が小さくなっていることが大きいと思われる(ただし、これは議論のあるところだろう。ここが本論ではないので、またの機会にしたい)。

いずれにせよ、価格変動と景気変動の相関が弱まっており、物価水準を金融政策のターゲットとするのは、景気安定化の目的に対して、実効性が低くなってしまったということである。

1977年の法律の文言で忘れ去られた「3つ目の目標」

このような大きな経済構造の変化が起きてきたにもかかわらず、中央銀行の金融政策が、第2次世界大戦後のアメリカにおいて、現象として現れた失業、インフレーションに対処することに使われてきたことを、中央銀行の歴史上の不変の哲学のように位置づけるのは間違っている。

そもそも、アメリカの中央銀行であるFEDの「dual mandate」(2つの使命)と呼ばれる雇用と物価目標というのは1977年になって明示的に定められたものであり、1913年の当初のFED設立にあたっては法律に記載はない。

さらに言えば「dual mandate」と解釈されているが、1977年の法律の文言には、maximum employment, stable prices and moderate long-term interest ratesと記されており、triple goals(3つの目標)である。そして、忘れられた3つ目のgoalは、金融市場を直接のゴールとしているのである。

雇用と物価が強調されたのは、アメリカにおいて第2次世界大戦後、失業とインフレーションに苦しめられた経験からであり、当時の経済構造において、重要な政策課題に対処したにすぎないのである。

では、21世紀の経済的な混乱はどのように生じたか振り返ってみると、その原因は、ほとんどが資産市場の金融バブルからである。

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