ここで再度確認しておく必要があるのは、「インフレはいついかなる場合も貨幣的な現象である(通貨供給量が重要だとする)」というフリードマンの有名な言葉は誤りであることは、現在でははっきりしているということだ。
ハイパーインフレは通貨価値の暴落であるからマネーそのものの話であるが、貨幣的なインフレもあればそうでないインフレもある。例えばコストプッシュインフレは貨幣的な現象ではありえないし、需要が過熱することによるインフレーションも、マネーが増えて起こるとは限らず、マネーが増えることが需要増加につながった場合にだけ起きる可能性がある。
そして、その多くは、資産市場の過熱を通じて起こるようになっており、すなわち、インフレーションが起きる前に金融資産バブルはほぼ必ず起きてしまうのである。
一方、デフレスパイラルは貨幣的な現象である場合もある。だが、マイルドなデフレーションはそうではないこともはっきりした。その意味で、日本の経験は知見としては世界には役に立ったとも言える(日本経済は大きな被害者だが)。
各国の経済構造に合わせた金融政策目標を
近年の日本の経験。過去の欧米の経験、アメリカで物価と雇用がターゲットになり、その後、アングロサクソン諸国を中心にインフレターゲットが広まったという経緯。一方で、例えば、シンガポール中央銀行は、為替レートを直接のターゲットとしているという現状。これらのことが意味していることは、中央銀行の金融政策の政策目標は、それぞれの経済構造に合わせたものであるべきだ、という非常に常識的な結論である。
したがって、世界的に経済構造が20世紀とは大きく変わった21世紀においては、新しい金融政策モデルが用いられるべきである。また、それが経済構造と合わなくなれば、柔軟に変更すべきなのである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想したり競馬について語るコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら