日銀には「21世紀型の金融政策モデル」が必要だ 世界中の中央銀行の金融政策は今や「時代遅れ」

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こうなると、売れるものが偉い、ということになり、素晴らしいものでも売れないものは価値がゼロとなる。

さらにひどいことに、どうやって、消費者が必要でないものを消費者に売り込むか、うれしいと思わせるか、潜在的需要に気づかせる(場合によってはブランドという催眠術)、ということが重要になった。こうなると、価値は決まらない。だから、価値は、どこまでも大きく成りうるし、突然価値がなくなることもある(催眠術から覚める)。バブルの崩壊である。

スミスが解けなかったと言われる水とダイヤモンドの問題も、ここにある。ダイヤモンドの価値は稀少性にあるのではなく、人々が欲しがるからあるのである(実際、ダイヤモンドは稀少ではない)。しかし、財としては、水のほうが、価値がある。……と、競馬から離れてきて、ここらへんは長くなってしまっているので、また回を改めよう。

さて、競馬も「優れた馬を生産する」ということが重要なのであり、ギャンブラーの馬券という消費は、競馬の本質ではなく手段である。実際、日本の競馬ブームは、人気ゲームの「ダービースタリオン」「ウマ娘」などという競走馬の生産という本質の側の要素から生まれてきたのであり、馬券をギャンブルとしてとらえる人々は、余興なのである。

さらに、「一口馬主業界の発達で、日本の競走馬生産は持続可能性を獲得した」(欧州は、貴族の没落でオイルマネー依存に。オイルマネーがなくなれば、次をみつけないと危うい)という議論があるが、これは実は誤りである。

なぜなら、一口馬主に売れる馬を作ることが重要になり(消費者主導だ!)、売るために作る、となった瞬間に経済は堕落し、バブルが生まれるように、競走馬生産の堕落が始まる。それを防止するためには、オーナーブリーダーが重要であり、売らない馬を作ることが重要なのである。

マイラーズカップの注目馬はカラテとエアファンディタ

さて、24日に阪神競馬場で行われる読売マイラーズカップ(第11レース、距離1600メートル、G2)の注目馬は、カラテ。そして、エアファンディタだ。

父が、それぞれトゥザグローリー、ハットトリックであり、これらの種牡馬は良血だが、マイナー扱いだ。このような血が細々でも残っていくことが重要で、数少ない成功馬がさらに大成功となって、血を残すところまで行ってもらいたい。

彼らを送り出すオーナーたちは、メジロ牧場、早田牧場の代わりにはならないかもしれない。だが、一般には売れないが、強い可能性がある馬を所有することを続けていってほしい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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