「食い物の恨みは恐ろしい」という言葉がある。『食べ物は人間にとって必要不可欠なものであるから、恨みを持たれるようなことはしないに限る』という意味だが、恨みが生まれるのは、何も「取った/取られた」場合に限らない。
そんな『食べ物の恨み』にまつわる体験談を聞きながら、普段、改まって話し合うことのない『食事』や『料理』について、基本楽しく、ときに真面目に考え直す、インタビュー連載第5回。
食の好みは人それぞれ。健康志向で素材にこだわる人がいれば、ジャンクフードをこよなく愛する人もおり、そんな別の宗教とも言える人たちが結婚したら、ややこしいことが起こるに決まっている。
「でも、一番の被害者は、そういう両親に挟まれる子どもだと思うんですよね」
そう語るのは、森本彰彦さん(仮名・37歳)。元ミュージシャンで、現在は音楽関連のコンサルティング会社を営む男性である。
ロックミュージシャン歴の長い彰彦さんは、アラフォーになった今も痩せ型の体型。食の好みについても「基本は健康志向で、野菜だけ食べていれば幸せ」「好きなスーパーは成城石井」とのことだが、しかし、小学校時代には短期間で10キロ以上太り、しかもその原因が父親だった……という、一風変わった経験を持っている。
対照的な食事観の両親
彰彦さんは、厳格な性格で、教育ママな専業主婦の母と、出版関係の会社に勤める、趣味人な父のもとに生まれた。「両親はいろいろと対照的な人」だったが、その中でもとくに違ったのは、食事観だったという。
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