「もともとなにかと対照的な両親だったので、ジャンクフード遠征だけが原因だったわけではなかったと思います。でも、大きなきっかけというか、最後のひと押しになったのは間違いないですね」
ジャンクフードが「なぜかダメ」な体質に
その後、中学に進学し、軽音楽部に入った彰彦さん。部活で体を動かしたことが功を奏し、体重は徐々に落ちて標準体型に戻ったが、程なくして、体にある異変が起きていることに気づいたという。
「自分でもいまだに理由はわからないんですけど、ジャンクフード全般がダメになってしまったんです。
とくに苦手だったのがマックで、てりやきマックバーガー1つ食べるだけでも食後に吐き気を覚えたり、ポテトの匂いにめまいを起こしてしまったり、明らかにおかしい体質になっちゃって……」
久しぶりに訪れたマックで、自身の変化に気づいた時は、大きな衝撃があったという。
そしてこの変化は、中学生にとってはかなりつらいものでもあった。
「ジャンクな食べ物って、ティーンにとってはある意味コミュニケーションツールじゃないですか。当時、軽音部に入っていたこともあり、練習後にみんなで行くことが多かったんです。
結果、みんなが楽しく話しているなかで、僕はいつも冷や汗をかきながら我慢していた感じで……。『好きな子とかいるの?』みたいな話になっても、内心『そんな場合じゃない』って感じでしたね」
そうやって体が受け付けない一方で、よりややこしいのは、彰彦さん自身はマックを「食べたい」と思っていたことだった。
「やっぱり昔は美味しく食べていたわけですし、父との楽しい記憶もあったので、食べたいは食べたいんですよね。でも、実際に食べるとその度に、ジャンクフード遠征がバレて、母が激高した時のことを思い出してしまう……そうして、気づいたんです。自分には、『母親に作られた品行方正な舌と、父親に与えられたジャンク舌の両面があった』ということに」
ジャンクフード遠征が一因となり、離婚した両親。幼心にその責任を感じて、そのトラウマが食の方面にも反映されてしまったのだろうか。
もちろん、当時子どもだった彰彦さんにはなんの責任もないし、言うまでもなくマックにも責任はないが、両親が責任者かと言うとそれも違う気もするだけに、なかなか難しい問題である。
「自分の舌の二面性のバランスを取るのには、大人になるまで10年ぐらい、なかなか長い時間を要しました。当時は父のことを、軽く恨んでいました(笑)」
父を恨むほど、ジャンクフードが苦手になったことは、彼にとって大きかったらしい。
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