夫との「隠れマック」で息子が激太りして妻は… 両親が「ジャンクフード離婚」した男性の苦難

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もっとも、肝心の舌の二面性の解決策は、至って平凡だったようだ。

「『自分にとって、食べていて不快にならない量を知る』ようにしたんです。自分の中での食のバランスチャートの調整法を見つけ出して、ジャンクから品行方正な食べ物までバランスよく食べるイメージです。

結果、今ではマックをはじめ、ジャンクフードも美味しく食べられるようになりました。とはいえ、それでも月に1回ぐらいなんですけどね」

父の気持ちを「今は理解」している

ちなみに、大人になった今、父親とは「たまにしか会わない」とのことだが、70歳近い今でも、食の嗜好は昔と変わっていないようだ。

「この間、父の一人暮らしの家に行ったんですけど、カップ麺が山積みでしたね。一応自炊もしてるらしいけど、マックの袋とか、牛丼の容器がゴミ箱に入っていたので、そんなには変わっていないと思います。不摂生が祟ったのか、一度心臓を患って死にかけているんですけど、それでも食の好みって変わらないんですよね」

かつては父に対し、恨みにも似た気持ちを抱いた彰彦さん。しかし、そのトラウマも克服し、大人になった今では、かつてのジャンクフード遠征を、悪い思い出とは思っていないようだ。

「父は出版関係の人間で、映画とか、ガジェットが好きな人でした。子どもの頃、その手のイベントによく連れて行ってくれたんですよね。だから、父の中ではジャンクフードもその一環だったと思うんです。『自分が好きなものを、子どもにも味わってほしい』というのは、親としてよくある気持ちでしょうしね。

僕はまだ子どもはいないけど、年齢を重ねたこともあって、父のそういう気持ちもわかるようになりました。だからこそ、当時のことを責めるつもりもないし、父にはこれからの老後の人生、ちゃんと食生活に気をつけて少しでも長生きしてほしいなと思っています」

そう父のことを語る彰彦さんの口調には、非難の色は一切なく、優しいものだった。

ちなみにだが、彰彦さんには付き合って7年ほどになる恋人がいるという。しかし、その女性は、彰彦さんとは対照的な食の嗜好の持ち主のようだ。

「彼女はジャンクフードと肉が大好きな人。だから、よくUber Eatsで注文する時に揉めるんです(笑)。食の好みが違う異性を好きになる……血は争えないとはこのことかもしれません」

食の好みは時に、離婚の一因になる。だが、だからといって、付き合ううえで気にされることはそこまで多くはない……そんな現実を示しているようだ。

もし将来、彰彦さんと恋人が結婚し、子どもが生まれた際に、食の嗜好の違いはどう受け継がれるのだろうか。

本連載「忘れえぬ『食い物の恨み』の話」では、食べ物にまつわる、「近くから見ると悲劇、 遠くから見れば喜劇」な体験談をお待ちしております。ちょっとしたモヤモヤでも、積年の恨みでも歓迎します。ご応募はこちらのフォームからお願いします。
岡本 拓 編集者・ライター

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Taku Okamoto

編集者・ライター。早稲田大学文化構想学部卒。ネットニュース運営会社(4年)などを経て、フリーランス(6年)に。2021年12月から東洋経済オンライン編集部にジョイン、2024年8月に社員に。谷頭和希さん、大木奈ハル子さん、城戸譲さん、井手隊長さんなどの書き手を担当中。媒体で開催する東洋経済オンラインアワードでは2022年にMVP(千駄木雄大さん)、2023年にクリエイティブ賞(大木奈ハル子さん)。登壇歴は「プロ育成ゼミ第1期〜三宅香帆と谷頭和希の文章講座」(2024年)など。会社四季報では外食業界を担当することが多いです。

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