「母は食のリテラシーがかなり高い人でした。普段の食事も食材から丁寧に選んで手作りしていて、冷凍食品も一切買わなかったし、なにかを買うときは必ず裏面の成分表示を見ていました。
『添加物はダメ』と言うだけじゃなく、『この食べ物は生産者を搾取していないか』とか『環境に優しい製法をしているか』とかも考えていたので、今思えばかなり先進的な感覚の持ち主だったと思います。
一方、父は対照的で、ジャンクな食べ物がとにかく大好きな人でした。普段、家では料理を作る母に合わせていたけど、記念日やクリスマスなどのイベントの時には、ここぞとばかりに山盛りのフライドチキンやピザを買ってくるような人で(笑)」
このように食の嗜好が正反対な両親だったが、彰彦さんが幼い頃は、父が母に合わせる形で、なんとか擦り合わせていたという。だが、彰彦さんが小学校中学年になる頃から、少しずつ変化が訪れるようになる。
「父がわざわざ僕を連れ出して、『ジャンクフードを食べに行く』というイベントが頻発するようになったんです」
わざわざ山を越えてマックへGO
「僕の故郷は、郊外のベッドタウン。どこに行くにも山を越える必要がある地域で、最初は『買い物の帰りに』とか、『どこかに遊びに行った際の昼飯に』というふうに、他のイベントに付随したジャンクフードでした。
でも、そのうち、『ジャンクフードを食べるためにわざわざ出かける』ようになって、中でも一番多かったのがマクドナルド。当然、母には内緒でした」
まだ幼かったこともあり、「最初のうちは、普段食べられないジャンクフードを、たくさん食べられることが単純に嬉しかった」という彰彦さんだったが、父と息子の秘密のイベントは、思わぬ経緯で母に露見することになる。彰彦さんが、短期間で10キロ以上も激太りしてしまったのだ。
「その頃まで一度も太ったことがなかったので、今思えば『そこまで太る前に食べに連れていくのやめろよ』って感じなんですけど、父には無理だったんでしょうね。ジャンクフード遠征は自分と父の秘め事だったので、真相を知った母は当然ながら激怒し、家庭内で大問題になりました」
その後、両親は離婚。彰彦さんは母に引き取られ、父とは疎遠になり、ジャンクフードとも距離を置いた食生活をするようになったという。
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