「悪口や愚痴を言わない人」が実は危険である理由 怒りには「現実と感情」で対処を切り分けよう

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「仕事帰りに愚痴りながら一杯」は効果アリ

「仕事帰りの一杯」は、若い世代などから「昭和のサラリーマン的」と揶揄されることもあるようです。またコロナ禍においては、あまり積極的にはできない習慣になってしまったようです。

けれども感情のケアという観点からいうと、リラックスした雰囲気の中、愚痴や悪口を聞いてもらうことは「味方工作」の一つ。それなりの必要性と効果があると、私は考えています。

とはいえ、現実的に「味方工作」をする際は、信頼できる口が固い人を厳選して、他の人の耳に入らない環境を確保しましょう。

ここでも「原始人モード」の視点になりますが、愚痴は逆に言うと、弱み情報であります。相手を間違えると、こちらの弱みが敵に伝えられて、一気に戦況が悪くなります。うっかり愚痴をこぼした中には、敵に通じるスパイがいるかもしれません。前に言った「悪口を言ってはならない」という戒めは、このあたりから来た処世術でもあります。「陰口」は、決して表に出ないような相手を選んでしないといけないのです。

そのためにも、日ごろから安心して愚痴を言い合える人間関係を築いておくのは、とても大切なことです。

ただ、それも難しい場合はプロのカウンセラーを利用するのも一つの手。カウンセリングスキルは優劣が大きくても、秘密を他言しないという守秘義務は、ほとんどのカウンセラーが守ってくれるでしょう。

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また補足しますと、SNSでは悪口はあっという間に拡散します。「味方工作」のつもりで、怒りに任せて投稿や書き込みをしたり、メールを送ったりしないようにくれぐれも注意しましょう。

最初に述べたように「現実の対処と感情の対処は別」です。

現実の問題を解決したいなら、先に「怒り」をケアすることです。その上で問題に対応したほうが「理性的な解決」という本来の目的地にグンと向かいやすくなります。

「悪口を言ってはダメ」「愚痴を言ってはならない」と日ごろから強く思っている人ほど、ぜひ「自分の感情をケアする」という観点を知って、役立ててください。

(取材/構成 向山奈央子)

下園 壮太 メンタルレスキュー協会理事長、元・陸上自衛隊衛生学校心理教官

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しもぞの そうた / Sota Shimozono

1959年生まれ。82年防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援で得た経験をもとに独自の理論を展開。陸上自衛隊衛生学校で、衛生科隊員(医師など)に対する教育に携わってきた。2015年に退官。現在は、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長を務める傍ら、講演や研修会で、独自のカウンセリング技術を普及。著書は『うつからの脱出』(朝日文庫)、『心を守る ストレスケア』(池田書店)など多数。

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