その施設を訪ねたとき、最初すごく目が冷たかったんです。「また来たよ」という感じで。
女性たちは、こう話していました。
「いろんな国からたくさんの人が見に来るけれど、私たちの憐みの姿を写真に撮るだけで、二度と会いには来てくれない」と。
バングラデシュのストリートチルドレンの子どもたちに会いに行ったときにも、そうした言葉を言われたことがあるので、心に刺さりました。
誰にも言えなかった苦しみを打ち明けた
「私たちを写真に撮ってもいい、だけど、せめて私たちの苦しみやどういう状況下にいるのかを、世界に伝えてほしい」
そう彼女たちに言われ、私は「必ず皆さんの声を世界に届けるし、そのつもりで来ているから」と伝えると、ようやく迎え入れてくれたのです。
ただ、これまで酷い目に遭ってきた女性たちを前に、私が言えることって何もなかった。だから、私自身が経験した、誰にも言えなかった苦しみをここでちゃんと話そうと思ったんです。
心に受けた傷や痛みを打ち明けると、「泣かないで、私たちは仲間だし、家族だから」って、皆が力強く抱きしめてくれました。そのときにわかったんです。「心の痛みって飲み込むものじゃなくて、どこかのタイミングで誰かと対話したときに治癒されるんだな」って。
――サヘルさんだけでなく女性たちにとっても、心が癒える瞬間だったのかもしれませんね。
帰ろうとすると、あるお母さんが「うちに来て」と自宅に招いてくれて。そこでまた衝撃的な事実を目の当たりにしました。
まず、彼女が玄関のあたりを指してこう言うんです。
「ここで息子が銃で撃たれて死んだの。私はその瞬間を見てしまったんだ」と。
どれほどの心の傷を負ったことでしょう。最愛の息子さんが殺された、その家に住み続けなくてはいけないことも、あまりにもつらすぎます。でも、彼女たちは場所を移ることもできないんです。
部屋の中に通されましたが、家具も何もなくて。食べ物もなくて、普段は寄付や周りの方々からもらったお菓子しか食べていない様子でした。でもね、そんな中でも彼女は、家にあるお菓子を一生懸命かき集めて、お皿に載せて、私にくれるんです。その精一杯のおもてなしに胸がいっぱいになりました。
ご自宅には旦那さんもいらっしゃって。その方はイラン・イラク戦争当時の兵士だったんです。
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