対ロシアで注目、インド「非同盟」の複雑な立場 大国化するインドはこれからどこに向かうのか

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4月11日、モディ首相とバイデン大統領の会談が行われた(写真:Bloomberg)

世界には約200の国があるが、「大国」と呼ばれる国はごくわずかである。大国の条件は、他国の圧力や影響によって自国の政策を変えることがない、逆に他国に対して影響力を行使し地域や世界の秩序を作りだすことができる国だ。冷戦時代のアメリカとソ連、現在のアメリカや中国が該当するだろう。

そして大国の地位から陥落したロシアによるウクライナ戦争は、かつての栄光を追い求めた無謀な行為であり、ロシアは国際社会の非難を浴びてますます窮地に陥っている。

ウクライナ戦争によって世界各国が混乱する中、インドの対応が注目を集めている。インドのウクライナ戦争に対する対応はアメリカや日本、欧州諸国とは異なっている。国連安保理や総会でのロシアに対する非難決議にはすべて棄権し、アメリカ主導の経済制裁にも加わっていない。ロシアに対する直接的な批判もほとんどしていない。

だからといって、アメリカなど西側諸国と対立関係にあるわけでもなく、むしろアメリカ、日本など主要国はインドの取り込みに力を入れている。

2030年にはインドはGDPでも世界第3位に

世界最大の民主主義国を標榜しているインドがなぜウクライナ戦争に対して煮え切らない対応をしているのか。それはインドの置かれている状況と今後の展望を見れば浮かんでくる。

2030年に、インドの人口は中国を抜き世界1位になり、GDP(国内総生産)も日本などを抜いてアメリカ、中国に次ぐ世界3位に飛躍する。しかも、軍事費はすでに世界3位の額となっている。数字のうえでは大国に位置する資格を持つことになるのだ。

冷戦時代にアメリカ、ソビエト連邦、いずれの側にもつかない「非同盟勢力の雄」を標榜してきたインドの外交は、今日も特定の勢力に与しない「戦略的自律性」が特徴だ。ロシアに対する今回の対応もその延長線上にある。しかし、もはや「大国途上国」を卒業する日は間近となっている。インドが大国への道を着実に進もうとしていることは明らかで、ウクライナ戦争に対する対応もその布石だろう。

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