保護者世代が就活をした30年前と今とでは、就職をめぐる環境はさまざまな面で大きく変化している。文部科学省の「学校基本調査」によると大学進学率は当時から約1.6倍に上昇し、大学数は800校超にまで増えた。
大学の在籍者数は1990年の213.3万人から2020年は291.7万人に増加。希望すれば誰でも大学に進学できるような時代が到来しており、若年労働人口が不足しているとはいえ、大手の人気企業に就職するのはたやすいことではない。
加えて、グローバル化とデジタル化が急速に進み、文理を問わずITスキルが不可欠な時代に突入している。さらに、ジョブ型雇用への移行をはじめ働き方も大きな転換点を迎えている。『就職活動に対する保護者の意識調査』の中に、「子どもの話をよく聞いて、親が余計な口出しをしないこと。親の知っている優良企業の格付けは、30年古いと認識すべき(娘/母親)」という声があったが、就職を取り巻く環境は30年前とは何もかも大きく変化していることを前提に、子どもの就活に向き合うべきだろう。
筆者も、「就活生なら誰でも知っているような大手IT企業の内定をもらったのに、『そんな会社、聞いたことがない』と親に反対されて入社先を変えた」という話を就活生から聞いたことがある。歴史ある大手企業なら親世代でもよく知っているので反対することはないだろうが、30年前とは産業構造も大きく変化している。
IT業界やサービス系の業界では新しく誕生し急成長を遂げた企業も少なくないので、「聞いたことがない」というひと言で子どもの進路をブロックしてしまうことだけは避けるべきだ。
コロナ禍でクラウドサービスやモバイルデバイスの活用が広がり、テレワークが当たり前になった。環境変化に対してどれだけ柔軟に対応できるかが企業にも求められている。そういった点では、押しも押されもせぬ大企業より新興企業に魅力を感じる就活生が増えるのも不思議ではない。
固定観念を捨て子どもの思いに沿った就活支援
子どもの就職活動への保護者の関わり方として、一般的に「過保護、過干渉は避けるべき」とはよく指摘されることだが、子どもの就活の状況や進捗具合は千差万別だ。「子どもを信じて放っておいたが、大変なことになった」との声もあるように、むしろ早期から積極的に介入したほうが良いケースもあるだろう。
いずれにせよ、まずは現在の就活環境を知ることが不可欠だ。インターンシップへの参加が当たり前になり、エントリーシートや面接の対策など、30年前には考えもしなかった取り組みを現在の学生は行っている。
また、コロナ禍でオンライン面接が一般化し、そのための環境づくりが不可欠となっている。『就職活動に対する保護者の意識調査』でも、子ども側から頼まれた支援として、「自宅でWEB受験をする際の配慮(スペースの確保、静けさの確保)」が第3位に入っているように、コロナ禍ならではの配慮も必要とされている。
子どもがどんな考えで就職先を決めようとしているのか、どんなことに悩み、困っているのかをきめ細かくすくい上げることが重要だ。子どもの気持ちを理解せず、頭ごなしに内定先を否定することだけは決してしないようにしたい。
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