常盤:日本と同じやり方ではうまくいかないこともあります。信賞必罰の基準を明言しておくこと、契約を重んじ日本の義理人情を押し付けないこと、口頭の約束や情報は実際に自分の目で確認するまで信用しないこと、ビジネスでは明確な取り決めが必要です。
同時に、そんな環境下でも、インド人の同僚や取引先の方々を尊敬すること、週に2、3回はインド人と同じテーブルでカレーを食べること、そんなことを心掛けながら毎日楽しく働いています。
英語力や専門性はどのくらい必要か?
石崎:明確な取り決めや割り切った姿勢の一方で、人間的な深いつながりを持とうとする努力はすばらしいですね。まさにインドの人たちと仕事をするうえで、最も大切なことかもしれません。ところで、日々の業務はなかなか大変だと思います。たとえば英語力や専門性など、どの程度、必要なのでしょうか?
常盤:契約書、年次報告書、政府の予算書、そのほかの公的書類が英語でもきちんと読める、また、同僚や取引先と臆することなく英語を使って議論ができる、その程度の語学力は必要だと思います。
また、専門性に関しては、これはどこにいても条件は同じだと思います。外資は実績重視の採用であるのに対して、日系は海外の現地法人でもポテンシャル採用をする傾向があります。特にインドは、たとえ専門性がなかったとしても、ガッツと若さがあれば日系企業で働ける可能性は大いにあります。しかし、働きながら専門性を身に付ける努力を怠れば、新たなキャリアステップにはつながらず、ただの時間の無駄で終わるでしょう。
「若者はまず海外へ飛び出せ」という議論もありますが、自己管理能力が高く、先々を見据えて行動できる人に限って有効なものだと思います。
石崎:入社後の努力を怠らず、ステップアップしていく志向は、まさに海外で求められるものですね。ところで、常盤さんは大学を出ていないわけで、一般的な海外現地採用のキャリアパスとは少し違っています。これまで、どういった経験をされたのでしょうか?
会社の指示に忠実すぎてクビになる
常盤:高校を卒業した後は、少しグレていました(笑)。地元の岡山県で、居酒屋でアルバイトをしていましたね。なんかこれではダメだ、と思い、タウンワークを開きました。1ページ目に載っていた出版社に電話をして面接をしたら、なんと採用が決まり、そこでは、セット教材の訪問販売を担当していました。
私は会社の指示には忠実に従うタイプで、「多少、面倒くさがられても売れるまで帰ってくるな」との教えを素直に守っていました。それが裏目に出て、本社に苦情が入って、クビになりました……。
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