ウィル・スミス問題「脱毛症」当事者はどう見たか 薬の副作用だけでなくさまざまな原因で発症

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「髪が抜けたり戻ったりを繰り返して治療しているときは、もう悲劇のヒロイン状態ですよね。年代的にもいちばん他人の目が気になってセンシティブな時期ですし、やっぱり“あるものがなくなっていく”という変化は恐怖です。誰でもこの状態を受け入れるのには、相当時間がかかるんじゃないかと思います」

美穂さんは、脱毛を繰り返している間、いつもウィッグと帽子をかぶっていたそうだ。前から美穂さんと知り合いだった筆者が彼女に会う際は、確かにいつも帽子をかぶっていた。しかし自然な姿ゆえ、脱毛症当事者とは一切気付いていなかったのが、正直なところだ。

「“髪がない“ことを周りに隠しもしないけど、あえて言うこともなかった。言ったらその人をびっくりさせたり、迷惑かけるような気がしていたんです」

ウィッグをつけた状態の美穂さん(写真:本人提供)

人は本来、さまざまな姿や形や特徴などがあって当然のこと。でも、同じような姿形であることが当たり前のように思えて、少し違うと無意識に反応してしまう。人間は見たことがないものや、未知なるものに対して防衛本能が働くそうで、「“驚く”というのは人間の反応として当然なこと」と、ASPJ代表理事の土屋さんは話す。

美穂さんは言う。

「隠さずにいようとウィッグを外したら、とても驚かれたことがあって。『どう対処していいかわからない』って、言われました。私が気にしなくても、それを見た人が受け入れられないパターンってあるんだなって学びましたね。そこからはあえてウィッグを外さず、ずっとひた隠して過ごしていたんです」

いつも後ろめたい思いをヨガが救った

これまでの美穂さんは、ずっと目の前のできごとから逃げずに一生懸命だったのだろう。そして、ストレスがまた体を痛めつけているようにも感じた。

「髪にコンプレックスがある、それを部活や仕事で払拭したかったんです。いい成績をあげることで髪がない自分を補いたかったけど、今思えば間違ったがんばり方でした。1つ成果が出れば嬉しいけど、また次にやらなくちゃ、もっともっと!という状態。褒めてもらっても、自分に納得できてない。その根底に、“私には髪がないから”という後ろめたい思いがあり続けていて、いつまでも離れなかったからですね」

20代後半、美穂さんは勤務中のストレス解消や、体の健康を取り戻すためにヨガを習い始めるが、このことが予想外の転機となった。

「ヨガでは、“あ、体側が伸びてる、ここが気持ちいい、呼吸が深くなった”とか、体の変化を観察するんですね。それで無意識に髪に引っ張られる思考から離れることができたのです。俯瞰できるようになって、“確かに髪はないかもしれないけど、それで不幸かといえばどうなの”という想いが湧き起こりました。

脱毛症は生まれつきや、幼少期から発症するケースも(写真:ASPJ提供)
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