ウィル・スミス問題「脱毛症」当事者はどう見たか 薬の副作用だけでなくさまざまな原因で発症

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今回のアカデミー賞でのウィル・スミスの一件について、土屋さんが感じることも打ち明けてくれた。

ジェイダさんは冷静な対応をしていた

「さまざまなご意見を目にしていますが、ジェイダさんは以前からご自身の脱毛症に関して発信もされていたし、ニュース後の発信を見て、冷静な対応だったと個人的には感じています。ジェイダさん自身が、自分のなかで脱毛症と向き合い見つけた答えがあるゆえの、ゆるぎない強さなのでしょう」

脱毛症は自己免疫疾患の一つであり、ストレスが発症原因のすべてではない。しかし、美穂さんのようにストレスがトリガーになって発症することもある。

土屋さんは、「美穂さんのように、急に発症するという状況は誰にでもありえます。今回の一件で海外の脱毛症団体と意見交換していますが、病気の認知がまだ低いと感じています。私たちなりにも発信は続けていきたいし、これを機会に多くの人が自分ごととして捉えるきっかけになってくれれば」と力強く話す。

ありのままの自分を受け入れるというのは、誰にとっても簡単なことではない。筆者自身、包み隠さない自分でいつも過ごせているのかと問われたら、答えに迷ってしまう。

だが、病気を抱えていたり姿や形に違いがあったりしても、あくまで目の前にある身体は器であり、それが人間の本質ではない。

誰もがかけている“色眼鏡”を外して、“透明な眼鏡”で心を覗き見できるようになったら、もっと生きやすくなるのかもしれない――隣にいる誰かのことをほんの少し慮る、そうなったらもっと互いを尊重し合える世の中になるのではないだろうか。

悩む自分を乗り越えて、メッセージを発する美穂さん(写真:本人提供)
団体概要
特定非営利活動法人 Alopecia Style Project Japan(ASPJ)
HP:https://aspj.site/
Facebook: https://www.facebook.com/AlopeciaStyleProject/
Instagram: https://www.instagram.com/alopecia.style/
永見 薫 ライター

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ながみ かおる / Kaoru Nagami

1982年生まれ。兵庫県出身、東京都在住。大妻女子大学比較文化学部比較文化学科卒業。中国と日本の女性史を中心に比較文化学を学ぶ。複数の企業勤務を経て2014年よりライター。主な執筆テーマは在学中より関心の高かったジェンダーや多様性のほか、働き方、子育て、まちづくり。1児の母。Twitter:kao_ngm

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