民間人410人の遺体、キーウ周辺の人々が語ること 米国人ジャーナリストが亡くなった現場付近は

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ロシア軍の侵攻が幹線道路から周辺地帯に広がっているとの情報もあった。いつ大規模な攻撃があるかもしれない。そのときに向けて用意しているという、あるものをボヴァが見せてくれた。それはビールやウイスキーの瓶で作った武器、火炎瓶だった。

イルピン手前の検問所にあった火炎瓶(写真:筆者撮影)

「これはとてもシンプルで、とても使いやすい」と話すボヴァ。開戦後、ロシア軍の戦車めがけて投げ放たれた火炎瓶が命中し、戦車を激しく炎上させた動画も流れていた。彼はそのことを例にして、いざとなったら自分も戦う、と語った。

午後になってロシア軍の攻撃が激しくなり、避難者も救急隊員も全員テントの裏に避難するよう指示が出された。検問所のそばで待機していた10名ほどのウクライナ兵が体制を整える。近くに配置していた戦車がイルピン方面に向かった。

尾崎孝史氏によるウクライナのレポート、3回目です

安全なときを見計らい、避難者はバスでキーウ駅まで搬送される。キーウ市内の縁者を頼って過ごす人。西部にあるリビウなどの都市に避難する人。国境を越え、ポーランドをはじめとする近隣国に避難する人などさまざまだ。

国連難民高等弁務官事務所は、3月29日までにウクライナから国外に避難した人が400万人を超えたと発表した。国内避難とあわせ1000万人が故郷を追われることになった。

一方、4月2日に解放されたブチャでは民間人410人の遺体が運び出されたと、ウクライナの検事総長がSNSに投稿した。ロシア軍による集団殺害の痕跡が見つかったことで、戦争の早期終結を求める声は一層高まることだろう。1日も早い停戦を願ってやまない。

 

連載1回目記事:日本人写真家が記録した"戦場"キエフの10日間
連載2回目記事:"戦場"キエフに留まる女性「死ぬ覚悟」を語る理由
尾崎 孝史 映像制作者、写真家

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おざき たかし / Takashi Ozaki

NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わる。映画『未和 NHK記者の死が問いかけるもの』(Canal+)を監督。

著書に『汐凪を捜して 原発の町 大熊の3・11』(かもがわ出版)。『未和 NHK記者はなぜ過労死したのか』(岩波書店)。写真集『SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語』(Canal+)で日隅一雄賞奨励賞、JRP年度賞。

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