圧勝のプーチン、ウクライナ最前線の緊迫の日常 日本人写真家が見た、ウクライナ人医師の活動

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先週末に大統領選挙が行われたロシア。得票率が9割に迫る圧勝という結果を受け、ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ4州の完全併合を目指し軍事作戦を強化している。

戦争の長期化が避けられない中、前線近くに残る住民の命を誰が守るのか。人道支援団体と連携し、危険地帯へ向かうウクライナ人医師を紹介する。

【ロシア軍による半包囲が続くバフムートの北側 】

赤色はロシア軍支配地域。緑色はウクライナ軍が奪還した地域(地図:DeepStateMapより)

前線地域の支援に向かうボランティアたちの実際

国際女性デーの3月8日、ハリコフ市の病院で家庭医をしているエレナ・エフレモバ(38歳)は四輪駆動車の助手席に乗っていた。目指すのはウクライナ東部ドネツク州にあるディブロバ村。片道200キロ、4時間以上の長旅だ。

最前線の街で診療の準備をする医師のエレナ(右)。2月2日 ドネツク州シベルスク(写真:筆者撮影)

「今日はこんなに待たされるのね」

ウクライナ軍が管理する検問所でエレナがつぶやいた。ドネツク州の要衝アウディーイウカが陥落したことで、ロシア軍の攻撃が激しくなっていた。やむなく、ウクライナ軍は前線に向かうボランティアの身元確認を強化していた。

前線に赴く医師のエレナ(写真:筆者撮影)

エレナが出張診療を始めたのは先月2日、激戦地バフムートの北にあるシベルスク市でのことだった。その日はボランティアセンターに医薬品を持ち込み、住民16人に薬を処方した。砲撃音が響く前線を訪れたのも、防弾ベストやヘルメットをかぶったのも初めてだったエレナ。帰り際、こう話していた。

「多くの年老いた住民が病を抱えていて、悲しくなりました。住宅も爆撃を受けてボロボロでしたし、幹線道路の橋も破壊されていたし」

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