民間人410人の遺体、キーウ周辺の人々が語ること 米国人ジャーナリストが亡くなった現場付近は

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砲撃の音が絶えない検問所

3月14日午前10時、筆者はイルピンやブチャにつながる幹線道路の検問所で降ろされた。アメリカ人記者の死を受けて、ウクライナ当局がここから先での取材を禁止していたためだ。キーウとイルピンの境まで5キロの地点だった。

「バーン、バーン」「ボーン、ボーン」

いくつかの種類の兵器が放つ砲撃音が聞こえる。避難者受け入れのボランティアをしている若者が、ロシア軍が発射したミサイルとそれを撃ち落とそうとするウクライナ軍のミサイルだと説明してくれた。

この日キーウでは、早朝の2時16分と4時10分に空襲警報が鳴った。5時すぎには、キーウ北部の団地にロシア軍のミサイルが着弾し、住民が亡くなっていた。その後も相次いだミサイル攻撃はイルピン方面からのものが多いと報道されていた。

筆者撮影の動画

厳重な警備の検問所を越えて、ワゴン車が1台やってきた。最初に降りたのは、銃をもったヘルメット姿のウクライナ兵だった。ドアを開けると、大きな荷物をもった女性たちが降りてきた。次にやってきた救急車両には男性もいた。皆、激しい交戦状態の街を脱出してきた住民だった。20人体制で救護にあたる救急隊員に支えられ、温かい紅茶やビスケットを受け取っていた。

避難してきた家族に声をかけた。17歳のリエラはこう話す。

「イルピンから来ました。ダ、ダダダって(ロシア軍に攻撃されて)、思わずのけぞりました」

リエラの母は生活物資の困窮について話してくれた。

「イルピンにはガスもガソリンも飲み水もありません。食べ物も底をつきました」

同じくイルピン在住のディアナ(41)は、運転手をしている夫とともに5歳の息子を連れて避難してきた。避難が遅れた理由について、こう話す。

「私は学校で心理学を教えています。なので、受け持ちの教え子たちが無事に避難を終えるまで、向こうにいました」

次ページ幅50センチほどの長い板を使って…
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