中国の「やられたらやり返す」戦狼外交が抱く難問 西側民主主義陣営に対して宣伝戦を強化する事情

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ロシアのウクライナ侵攻を受け、中国の「戦狼外交」のあり方が問われている(写真:© 2021 Bloomberg Finance LP)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

中国共産党の体制や政策に異を唱える米欧日などに対して「報復」措置を吠える「戦狼外交」は、19世紀以降に西洋や日本に領土や主権を侵食された「屈辱の歴史」からはい上がり、今や「強国」になった国民のナショナリズムを刺激しており、習近平共産党総書記(国家主席)は求心力を高める国内的効果を狙っている。

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しかしロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカのバイデン大統領が、ロシアのプーチン大統領について「権力の座にとどまってはならない」と述べ、米欧日などの西側民主主義陣営と、中ロを中心とした権威主義陣営の対決がより鮮明になる中、習近平は、体制の存亡を懸けた対西側イデオロギー闘争を勝ち抜く「宣伝戦」の一環として「戦狼外交」を強化する必要性を感じているだろう。ただロシアに偏りすぎる印象も避けたい意向で、その強硬宣伝工作のあり方が問われている。

中ロ「共闘」は絶対的原則

習近平が2月4日、ウクライナ侵攻を前に北京冬季五輪開会式に出席したプーチンと会談し、公表した共同声明でこう明記された。

「中ロは、外部勢力が両国共同の周辺地域の安全と安定を破壊することに反対し、外部勢力がいかなる口実であれ、主権や国家の内政に干渉することに反対し、カラー革命に反対する」

習近平は米欧日などを念頭に、権威主義陣営を動揺、弱体化させる「カラー革命」への警戒感をあらわにした形だ。共産党体制を維持、安定させ、社会主義の優位性を広めるため、習近平にとって中ロ「共闘」は、ウクライナ危機がどう転ぼうと絶対的な原則である。

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