「ワクワク大作戦」VS「1秒を削り出せ」の差とは?
原監督のキャリアは実に興味深い。高校時代(広島・世羅高校)から駅伝選手として大活躍したが、自身は大学では箱根と縁はなし。卒業後、中国電力で陸上部に入部したものの、ケガに悩まされ5年で引退。その後は、営業職としてサラリーマン生活を送っていたという。営業マン時代も、省エネ空調設備「エコアイス」などの売り上げで大きな実績を上げたというが、長くなるので割愛しよう。
サラリーマン生活10年がたったころ、青学から後輩経由で監督の誘いがかかった。もっとも、当時の青学は、30年近く箱根の出場もなく専用グラウンドすらない弱小大学。それでも、「陸上で自分は何かを成し遂げてきたのか…」と自問自答した原氏は、広島の家を離れ、退路を断って嘱託職員での監督業を11年前にスタートしたのだ。
しかし、すぐに結果が出なかったのは各種報道の通り。原監督が長年チーム作りに苦労してきたことは想像に難くないが、なんといっても筆者が度胆を抜かれたのは、今年のスローガンである。
青学のスローガンは、なんと「ワクワク大作戦」。前年覇者の東洋大のスローガンは「1秒を削り出せ」、駒沢大学は「原点と結束」である。東洋大や駒沢大のいかにも真剣なスローガンに対して、年に1度の真剣勝負の場で、「ワクワク、ドキドキさせるレースで、自分も楽しみながら、見る人を楽しませたい」と名付けた作戦は、前代未聞のスローガンである。しかし、そこにはワケがあったのだ。
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