サラリーマン生活を経て、監督に就任した2004年当時、青学の駅伝は弱小、有望選手はまったく集まらなかったという。今の青学の「明るい雰囲気で勝ちたい」というポリシーは、「長距離のイメージが厳しい、つらいだけでは、他のスポーツに選手が行ってしまう。楽しくやりたかった」(原監督)という想いからきていた。
例えば、今年の5区で後続に大差をつけ、新たな山の神となった神野選手は、5区を任される際、原監督に「国民的ヒーローになれるぞ」と言われ心が動いたという。人の選手だけでなく、他のメンバーにもそれぞれ、あらかじめ成功のイメージを持たせたのだ。
「能力は未知数でも、組織に合う人」という選択
もっとも、スローガンだけで勝てるほど箱根駅伝は甘くない。当然、大事なのが有望な人材をどう集めてくるか(リクルーティング)だ。
今回の最大の勝因となった神野選手も、他の主力選手も、原監督が自ら口説きスカウトしてきた人材である。では原監督はどのように人材を見極めているのだろうか?その答えがまた、非常に興味深いのだ。
なんと、求める人材は「青山学院というスクールカラーにふさわしい、明るくて、表現力が豊かな人材」だというのだ。もちろん陸上能力も考慮するが、まずは創りたい組織に見合う人材を採用しているというわけだ。
どういうことか。高校時代は無名だった神野選手が、監督からスカウトされた経緯を振り返ると「原監督の人柄や、部の雰囲気も明るい感じがして、自分は青学で強くなりたいと思いました」と言っている。まさに組織の雰囲気が人材確保に寄与したのである。
「企業は人なり」と言う言葉がある。最終的には、ビジネスも駅伝も人材がカギになる。能力が高くても、社風にあわない人をとるか、能力は未知数(もちろん一定以上はあるとの判断だ)でも、社風に合う人をとるか。結局、後者を貫いてきたことが、今年の成果につながる土台になった。
もう一つの大事なポイントが、育成だ。そこにも、陸上とは違う原監督のサラリーマン時代の経験が色濃く活きている。
一般的に言えば、強豪校ほど、ルールを厳格にしたうえで、規律を重んじ、トレーニングも「中央集権型・管理型」で行いがちだ。
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