ソーシャルリーディングで広がる読書体験

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クリッピーと違って電子書籍端末に他人のコメントは表示されないため、読書そのものに没頭できる。サイト上でシェアされた文章は、人気順に表示される。ほかのユーザーの引用箇所や感想を見ることも可能だ。

NHK出版は紙の書籍自体の共有の試みを行っている。12月18日に発売した『シェア』は、本にシリアルナンバーを割り振り、読み終わった購入者が友人に譲ることを奨励するキャンペーンを展開。読者が特設サイトにナンバーを入力することで、本が見知らぬ誰かの手へと渡っていく様子を追跡した。中には東京から九州まで旅した本もあった。

出版社がソーシャルリーディングを手掛けるのは、第一には話題性を高め販売増が期待できるからだ。が、読者の反応が文章ごとにリアルに伝わるので、今後は改訂時に反響の多かった部分を重点的に補強したり、疑問点が多い部分の解説を別に発売したりすることも考えられる。読者が参加して作り上げる書籍も登場するだろう。

ソーシャルリーディングは項目ごとにテーマが明確なビジネス書には向いているが、全体の文章で一つの世界観を作り出している小説などでは一部引用はそぐわない。「ネタバレ」の危険もある。文芸性の高い文章では、読書中に他人の感想が読めてもうるさいだけかもしれない。

そもそも電子書籍自体の普及は始まったばかり。ソーシャルリーディングが定着するかは、サービス事業者、出版社、さらには読者の創意工夫にかかっている。

(週刊東洋経済2011年1月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

※初出時に一部誤りがありました。お詫びして訂正します(2011.2.11)
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