仏紙襲撃は欧州に極右勢力台頭をもたらす

欧州に広がる「反イスラム」の波

7日、銃撃を受けた仏週刊紙「シェルリエブド」本社(パリ市内)。著名な風刺画家や記者ら12人が死亡した(ゲッティ・イメジーズ)

イスラムに対する風刺報道で知られる、フランス週刊紙本社へのまるで軍隊の仕業ともいえる洗練された銃撃事件は、欧州における反イスラム的感情を加速させ、フランスの極右政党への背中を一段と強く押すことになりそうだ。

「欧州は今、非常に危険な状態にある」と、英ロンドンのキングスカレッジの過激化国際研究センター(the International Center for the Study of Radicalization=ICSR)ディレクター、ピーター・ヌーマン氏は指摘する。「ジハードを推奨するような機関に対する支援者たちの過激化に加えて、白人の労働者階級も自分たちはエリート層から切り離され、公民権を剥奪されている、との感情を強めており、危険度は頂点に達している」。

イスラム教を攻撃してきた「シェルリエブド」

イスラム過激派研究で知られるフランスの学者、オリバー・ロイ氏は、今回のパリでの銃撃事件をアルジェリア戦争以降、フランス本土で起きたもっとも凶悪なテロ事件と断言する。テロの対象および被害者の数を例にあげ、「量的にも質的にもターニングポイントと言える事件」と話す。「最大級の打撃を与える攻撃だった。テロリストたちは大衆にショックを与えるために事件を起こしており、その意味からすると”成功”したわけだ」。

実際、パリ市民が受けた精神的打撃は大きく、次の攻撃に対する恐怖感も広がっている。「街がどんどん安全でなくなっていくような気がしてならない」と、ディディエ・カンタ氏(34)は警察のバリケードの脇に立ち尽くしてこう話す。「今日起こったのであれば、また起こる。今度はさらにひどくなるかもしれない」。

カンタ氏は今回の事件によって、反移民感情がより高まる可能性を指摘したが、多くのフランス人が同様のことを考えているはずだ。「イスラム教は神のため、平和にための宗教だと私たちは教えられてきた。しかし、こうしたジハードを起こすような違うタイプのイスラム教徒が平和を追求しているようには感じない。彼らにあるのは憎悪だ。いまやどちらが本当のイスラム教徒なのかわからない」。

襲撃を受けた週刊紙「シェルリエブド」は騒がしく俗的に、そしてときに商業主義的なやり方で、(イスラム教の預言者)ムハマンドを含めたイスラム教のすべてを攻撃してきたが、これはまた、フランス国内で人口を増やしているイスラム教徒(いまやフランスは欧州一のイスラム教徒人口を抱えるとされる)に対するフランスの攻撃的な世俗主義のシンボルでもあった。

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