仏紙襲撃は欧州に極右勢力台頭をもたらす 欧州に広がる「反イスラム」の波
そしてこれに対して7日、イスラム過激派が反撃した。
「(シェルリエブドによる)無神論的な行為こそ今回の文脈においては戦争行為だった」と、パリで植民地語の世界論を教えるアンドリュー・ハッセー氏は話す。同氏は、著書「The French Intifada(フランスによるインティファーダ)」で、いまだ植民地時代とアルジェリア戦争を引きずっている、フランスとイスラム教徒の複雑な関係について取り上げている。
「政治的には、左翼政党はフランスとアラブ諸国間の対立から目を反らし続けている」とハッセー氏はいう。「しかし、一般的なフランス国民はこの対立を感じ取っている」。
今回の銃撃事件によってイスラム教徒も国内で反発が強まることを恐れている。「テロリズムと聞くと、イスラム教を結びつける人が少なからずいる」と、銀行で働くアルノー・ンゴマ氏(26)は話す。
欧州中に広がる「反移民流入」の波
サミア・エルトラシ氏(27)も同意見だ。「イスラム教に対する恐怖心はどんどん膨らんでいくと思う。こういうテロリストほかのイスラム教徒も結びつけて考えてしまう。それによって得するのは極右勢力なんだけれど」と話す。
イスラム教徒を国の価値観に対する脅威と見なす、反移民の右翼政治勢力は近年、西欧諸国で増え続けている。
たとえば最近、モスクの襲撃が相次ぐスウェーデンでは主要政党が結束し、最近の世論調査では15%ほどの支持を得ている反イスラム、反移民のスウェーデン民主党から距離を置こうとしている。
ドイツでは、移民流入やイスラム教の影響力拡大に反対する大規模はデモが、「西洋のイスラム教化に反対する愛国主義欧州人(Patriotic Europeans Against the Islamization of the West=PEGIDA)」というグループの主導で、ドレスデンやその界隈で開かれた。現在、かつての東ドイツを中心に増えているこうした内容のデモは、欧州では極めて珍しい。ドイツのトーマス・デメジエール国防相は7日、記者団に対して「状況は極めて深刻。パニックになる必要はないが、警戒する必要はある」と語った。
フランス同様、多くのイスラム系移民を抱える英国では、イギリス独立党が「英国的価値観とアイデンティティの危機」を理由に、欧州連合(EU)脱退と移民政策の見直しを訴えている。主要政党もこれに対し、より厳しい移民政策を検討すべきだとの姿勢を見せている。